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CG125は当初日本生産だったが、徐々に現地生産・現地販売へ
*当記事は過去に短期連載した記事の総集編となります。
1970年代に新興国向けに開発されたホンダの125ccバイク「CG125」。
日本ではほとんどなじみがないが、東南アジアをはじめとする過酷な条件下で使用される国向けに、タフでメンテナンスも容易なOHVエンジンを採用して1974年に登場したモデルだ。
1975年3月タイで発売されたのを皮切りに、その後、アジアや南米などで多くの支持を集めていく。その結果、スーパーカブに匹敵するほどワールドワイドに活躍するバイクとなっていった。
当初CG125は鈴鹿製作所、後に熊本製作所で生産が行われ各国に輸出されたほか(日本で生産されていたが国内正規販売はされなかった)、1976年にはブラジルの企業との合弁会社による現地工場で生産を開始。
日本での生産は1990年代後半で終了したが、ブラジル製は独自の進化を遂げて2018年末で生産終了となるまで、42年間で700万台を販売するロングセラー大人気車となった。
また、韓国、タイ、インドでも生産されたほか、現在はパキスタンなどでも生産されており、実はスーパーカブと同等か、あるいはそれ以上に世界を席巻したモデルなのだ。
CG125は中国へも輸出されていたが、1992年に中国の広州汽車集団有限公司と日本のホンダとの合弁会社として設立された「五羊-本田」による現地生産が行われ、これまでに1500万台以上を生産、販売している。
中国においても非常に良く売れたが、半面、コピー車も多く出回る事態となった。
また、同じくホンダと中国現地企業の合弁会社である「新大洲本田」でもCG125は生産が行われてきた。
「新大洲本田」と「五羊-本田」とはエンジンや車体の構造などは共通したモデルが多いが、ライバル意識はかなり強く、似たモデルはあってもまったく同じモデルは存在しない。最近まであった新大洲本田製CG125は、外観は五羊-本田製CG125とほとんど同じながら、独自の進化を遂げバランサー付きOHCエンジンを採用していた。
実際、CG125は燃費ヨシ、シンプルかつ丈夫なバイクである
中国においても環境規制が厳しくなっていくなか、基本設計が70年代の空冷エンジンを搭載するCG125はさすがに生産終了となるのか……と思いきや、環境規制の基準で世界的なスタンダードになっているヨーロッパの「ユーロ4」に対応させたCG125を五羊-本田は作ってしまった。
そんな2019年型の中国版「最新CG125」と、日本生産版(*)を愛用するライダーが自身のCG125と比べてみた。
*編集部註:日本生産版であってもCG125は輸出専用車で、正規販売は行われていない
筆者のCG125は2000年に購入した1998年型の日本製で、現在までに7万km以上走行。この間、主だった修理歴はシート表皮の張り替え(現在のはノンオリジナル)とCDIの交換が1回、ホイール内ギヤの摩耗により速度計が動かなくなったのが1回、回転計のワイヤー切れ1回、ステムベアリングのガタつきを2回修理した程度。あとは消耗品の交換で済んでおり今でも快調だ。
細かく言うとセンタースタンドを上げたときの衝撃を緩和するダンパーが劣化してバシャンと大きな音を立てるようになったりするなど、細部の経年劣化は免れないために買い替えようと思ったことも一度ならずあった。
が、そういう部分も手を入れていけばちゃんと直るし、維持費も安く、燃費はコンスタントに40km/L以上、うまくすれば50km/Lをマークする。
ほかにも「エンジン屋」と呼ばれるホンダの面目躍如たるOHVエンジンのフィーリングや、余計な装備は一切付かないシンプルさなどが気に入って、これまでにも原付から大型、国産、外車を問わず10台以上乗り換えてきた中でも一番長く付き合っている。
中国でCG125は「第7世代」まで発展している
「CG125は中国バイク史における神話である」と言ってはばからない彼の地のマニアの区分法によると、この1998年型はシリンダーヘッドカバーの色が銀色(これより前のモデルは黒)であることから「銀猫」と呼ばれ、第4世代という位置付けがなされている。以下も、中国のマニアによる分類だが……
第1世代はCG125同様1970年代に登場したCB125JXと似た外観の丸目ヘッドライトで、第2世代で角型ヘッドライトを採用し燃料タンクやサイドカバー、シート形状を変更。ここまでは6Vのポイント点火で、それぞれ「白金1代」「白金2代」と呼ばれる。
CDIや12V電装を採用して1980年代末から1990年代半ばまで生産された第3世代は「三毛猫」と呼ばれ、第5世代から生産を中国に移管してセルスターターや5速ミッションを装備。2008年に登場した第6世代で「OTR」と呼ばれる新型エンジンを採用、そしてFI化された現行型は第7世代……というくくりになる。
中国生産版が輸入車として流通しているのは知っていた。ただ、これまで自分が所有する以降の型の実物を見る機会は皆無といっていいほどなく、ウェブの写真などを見て「まだ現役だったか」くらいの認識しかなかったのだが……。
改めてじっくり実物と比較してみると、予想以上の別物へと進化していることが発見できた。以下、その主だったところを列記していこう。
【外観の比較】最新中国版CG125 vs 最終日本版CG125
中国生産の最新型CG125は、各種センサーや、蒸発したガソリンを外に出さないためのキャニスターなど、様々な補器類が追加されてだいぶ物々しい姿になった(近年の空冷エンジンのロングセラー車と同様だ)。
が、それより気になったのはエンジンの前に見えるフレーム。中国生産の最新型は自分の日本生産版1998年型と比べて1.5倍近く太くなっていて、まるでサラブレッドの脚と農耕馬の脚(?)くらいの差がある。
リヤウインカーの位置もリヤシート後端部まで移動しているが、この付近のフレームもかなり頑丈そうな作りに変わっている。なお1998年型CG125のリヤキャリヤはオプション設定で、現行型のものと比べて小ぶりできゃしゃな作りである。
(ちなみに日本生産版はシングルシート+大型リヤキャリヤ仕様に仕立てることもできた)
燃料タンクは全体の造形こそほとんど変わってないが、中国生産の最新型は給油口付近にくぼみが設けられている。
【エンジンの比較】最新中国版CG125 vs 最終日本版CG125
一番の大きな違いが燃料供給がキャブレターからFIとなっている点だが、両車ともOHVで、ボア・ストロークも同じ。しかし、よく観察するとシリンダーヘッドカバーをはじめとして造形は別物だ。特に腰下の造りはだいぶ異なる。
マフラーも長さが変わっているは、環境性能向上のためだろう。
ミッションにも違いがあり、日本生産版1998年型CG125のミッションは1番下がNとなるボトムニュートラルの4段リターン式。シフトアップの際は前側を下に、シフトダウンは後ろ側を踏み込む。
対して、中国生産の最新型CG125のミッションはは5段ロータリーで、シーソー式ペダルの前側を踏み込むとN→1→2……とアップしていき、5速から前側を踏み込むと再びNに戻すことができる。
また中国生産の最新型はセル始動のみとなったが、FI車としては珍しく燃料コックを装備している。
【足まわりの比較】最新中国版CG125 vs 最終日本版CG125
ホイール径やタイヤサイズはまったく同じだが(前後18インチ)、中国生産の最新型CG125はより大径ドラムのブレーキが装備されているされている。実際乗り比べると、効きも相応に強力になっていた。
サスペンションは日本生産版1998年型でも硬めだったが、中国生産の最新型CG125はいっそうバネっぽい「ボヨン」とした動きで、1名乗車ではフロントブレーキをかけてもほとんど沈み込まない。フレームと併せてヘビーデューティ化がいっそう進んでいる感じだ。
【装備の比較】最新中国版CG125 vs 最終日本版CG125
前後フェンダーのフチがていねいに加工されていたり、シフトペダルの造形が凝っている日本生産版1998年型CG125に対し、中国生産の最新型CG125はフェンダーのフチがグニャグニャした線を描いていたり、シフトペダルの造形がだいぶ簡素化されている点には思わず苦笑い。
生産環境の違いもさることながら、コスト重視の結果もあるのだろう、2000年に購入した際の車両価格は約20万円だったが、現在輸入されて流通している中国生産版は約16万円。実際、安いのである。
一方、中国生産の最新型はセルスターター、大型リヤキャリヤ、シフトインジケーターなどが付いており、装備の充実ぶりは比べるべくもない。
それでもCG125のカタチが変わらないのはナゼ?
ここまで中身は変えておきながら、このデザインに固執し続けるのは日本におけるスーパーカブと同様に「この姿でなければCGにあらず」と考えるユーザーが少なからずいるためのようだ。
最近は違法コピーに対する姿勢や環境が変わってきたためすっかり見なくなったが、かつてCG125を忠実にコピーした模造品が中国市場で氾濫していたことからもそれはうかがえる。
コピーであっても構わないから「CG125」が欲しい、という人気の裏返しなわけで……。
それにCG125は最初のモデルから、燃料タンク部分も荷物や人の積載を考慮してフラットな形状にしたほどの実用車。その精神がしっかりと継承されているのだろう。
五羊-本田製CG125Fi主要諸元
【エンジン・性能】
空冷4ストローク単気筒 総排気量124cc 最高出力7.3kW<9.9ps>/8000rpm 最大トルク9.5Nm<0.9kgm>/6500rpm
【寸法・重量】
全長1940 全幅740 全高1020 ホイールベース1200(各mm) 車両重量113kg 燃料タンク容量8.6L
【参考価格】
15万9000円(バイク館SOX)
レポート●高野栄一 写真●モーサイ編集部 編集●上野茂岐