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追記3月20日:1991年第29回東京モーターショーで「XF4」が展示されたときの様子の写真を追加しました。
スズキ XF4「1991年第29回東京モーターショー登場のコンセプトモデル」
2020年春に登場したホンダ CT125・ハンターカブ。
維持費も安い原付二種クラスで、オシャレなデザイン。そして「カブ」シリーズならではの「使い勝手の良さ」を受け継ぎつつ、その上、釣りやキャンプなど昨今人気のアウトドアアクティビティとの親和性も高い──。
発売直後は納車待ちが続出したというが、売れに売れるワケである。
が、そんなホンダ CT125・ハンターカブ同様のコンセプトを、スズキは30年前の1991年第29回東京モーターショーで提案していた。こんな凄い形で……。
そのコンセプトモデルの名は「XF4」。
強制空冷2サイクル125cc単気筒エンジンを搭載し、無段変速トランスミッションを組み合わせ、なんとクルマのフルタイム4WDならぬ、フルタイム2WDで前後輪ともに駆動する「どこでも行ける125ccスーパーレジャーバイク」である。
バブル時代の名残を感じる「原色系」(当時のスキーウエアなどを彷彿させますね)のカラーリングもさることながら、真っ先に目が行くのは4輪改造車の「竹槍マフラー」のようなパーツではないだろうか。
これはアップマフラーではなく釣り竿ホルダーなのである。「ぜひ釣りに使ってくれぃ!」と言わんばかりに、水面から飛び跳ねる魚のイラストがタンクへ描かれている点にも注目。
その他にも、サイドスタンドは不整地でも安定するように「折り畳みシュー」が装備されていたり、ヘッドライトは取り外してサーチライトとして使えたり、コンパスがついていたり、徹底してアウトドアでのアクティビティ用途を追求した装備の数々……男の子の夢と遊び心がてんこ盛りという感じである。
スズキ XF4の大きな特徴「無段変速AT+フルタイム2WD」
以下は当時スズキが発表した資料の抜粋である。
XF4はオートマチック無段変速フルタイム2WDを採用。フルタイム2WDのメリットを最大限に活かした簡単操作の全地形走破バイクです。
前・後輪回転差吸収装置を持つことにより、ブレーキング現象及び駆動力によるハンドリングへの影響を解消。極太低圧タイヤとのマッチングにより砂上、雪上、泥濘地、低ミュー路で2WDのメリットを最大限に発揮します。またVベルト無段変速や低シート高により、ビギナーライダーや女性にも扱い易いよう、考慮されています。
しかし、XF4が市販車として実現することはなかった。もちろん2WD機構の実用化という大きなハードルもあったことだろうが、レーサーレプリカブームは後退し始めていたとはいえ、まだまだバイクの魅力として「速さ」や「パワー」への比重が大きかった時代。
XF4は当時のユーザーにとっては斬新過ぎたというか、125ccバイクでゆる〜く釣りに行ったりキャンプしたりなんて需要があんまりなかったというか──。
実際、スズキは1991年第29回東京モーターショーで、まさに「速さ」や「パワー」を追求したマシンである水冷化したGSX-R750を発表しているのだが……一方「ポスト・レーサーレプリカ時代」を見据えてか、それ以外の魅力を持ったバイクへのアプローチも行っていることが、第29回東京モーターショー出展車を見るとわかる。
SW-1の市販予定版(発売は1992年。コンセプトモデル自体は1989年第28回東京モーターショーで発表)や、グース250の市販予定版(SW-1同様、発売は1992年)が公開されているのだ。
ホンダ ADV150が浸透した現代だったらアリなコンセプトかも
XF4もそうした試行錯誤のひとつだったのだろうが、ちょっと時代が早すぎたのかもしれない。
しかし、現代ならこのコンセプトは受け入れられるのではないだろうか。CT125・ハンターカブ同様、2020年に登場して販売も好調だという、ホンダ ADV150のような「SUVイメージのスクーター」もあることだし。
2WDはさすがに難しいにしても、例えばアドレス125をベースとしたオフロードテイストのスクーターなんてどうだろう……ん?CT125・ハンターカブじゃなくて「スズキ版ADV150計画」になっちゃった!?
まとめ●モーサイ編集部・上野 写真●八重洲出版
追記3月7日12時15分:1991年は20年前ではなく30年前でした。タイトル記事本文とも訂正を行いました。