CB92のレースデビューと60年の歳月
CB92がデビューした全国規模のレースは1959年8月の浅間火山レースだった。
同レースの耐久ウルトラライトクラス(125cc)には、同年6月にイギリスのマン島TTレースにホンダとして初参戦したGPマシンのRC142も参加していた。

ところが本番では若干18歳だった北野 元の駆るCB92が3台のRC142を従え、11秒の差を付け勝利してしまうのである。
この実績でホンダチーム入りし、後に日産のワークスドライバーにまで登り詰める事になる北野の腕が際立ったとは言え、CB92のポテンシャルの高さからなるデビューウインである。

その後も各地のレースで活躍をするのだが、125ccの軽量クラスとしてはスズキやトーハツをはじめとする2サイクル勢に対し徐々に戦力を失い、スプリントレースから、4サイクルエンジンの持ち味を生かしたツーリングモデルへのニーズに変化していった。

CB92の発売から5年後の1964年になると、パイプフレームを持ち、より本格的スポーツモデルのCB125(ベンリィCB93)にフルモデルチェンジし、CB92はその生産を終えた。
CB125はその後も何世代にも渡りホンダの小排気量クラスの看板商品としてモデルチェンジを繰り返したが、外観・性能共に旧態然したCB92は、その多くがスクラップ置き場で見られる日々が続く事になった。

しかし、1980年代半ばに日本で旧車ブームが起きるとCB92はホンダのブランドとその強い個性から人気が沸騰、1960年代を代表する貴重車となり、現在ではその残存数の少なさも手伝って、ファンの間で高いプレミアム性を維持しているモデルになっていった。

CB92は名前からして「ベンリイスーパースポーツ」とは言うが、現在の目から見れば60年も昔の技術。
その乗り味はというと、2気筒らしい滑らかな回転感はあるものの低回転で回る事を好まないエンジンと、ボトムリンクのフロントサスペンションとプレスフレームから来る走行フィーリングは独特の感覚。
「CB=万人に乗りやすいスポーツバイク」というイメージがあるが、「CBなのにこんなに変わったオートバイなの?」 と言ったらCB92オーナーには叱られてしまうだろうか。
しかし、稀有のスタイリングとホンダ最初のCBと言うロマンが今なお世界中のファンを引き付けて止まないのである。

ベンリイスーパースポーツ オーナーズクラブ CB92
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