1980年代のアメリカンバイクというと、ヨーロピアンスタイルのバイクにアップハンドルや段付きシートを装着したものが主流で、車名に「LTD」や「カスタム」が付与されるモデルがほとんどだった。
しかし90年代に入ると、アメリカンクルーザーとして専用設計されたモデルが登場。
ゆったりとした乗車姿勢がもたらす、気負わずに乗れてバイクを楽しめるスタイルは、ジャパニーズアメリカン=ジャメリカンとも呼ばれ、多くのバイク乗りの心を掴んだ。
カワサキ・ゼファーが巻き起こしたネイキッドブームと同様、ハイスピードやコーナリングのスポーツ性を追求することだけがバイクの楽しさやおもしろさではないことの証明でもあり、レプリカブーム後の日本のバイクカルチャーを多彩なものにした。
今回は1980年代後半〜1990年代に登場し、高い人気を誇った400ccアメリカンモデルのなかから、今でもオススメしたい5車を紹介していこう。
ホンダ・スティード400
1988年に登場したホンダのアメリカンクルーザーで、52度V型2気筒OHC3バルブエンジンを搭載。シリンダーに多数の空冷フィンを配した水冷エンジンやリジッドフレーム風のリヤサスによって、乗りやすさと外観の美しさを両立させたことでアメリカンクルーザーブームの中心的存在となった。
1995年には従来モデルにVLXの名を冠したうえで、フラットバーハンドルを装備するVCL、出力性能を高めたVSEが追加された。さらに1998年にはスプリンガーフォークを装備するVLSが登場し、クラスを超越した所有感を持つモデルへと成長。
ファクトリーカスタムを前面に押し出すことで、日本独自の400ccアメリカンカルチャーを多彩にするとともに盤石なものとした立役者だ。
ホンダ・シャドウ400
シンプルで現代的なアメリカンクルーザースタイルであったスティードに対して、メッキパーツやディープフェンダーなどのエクステリアでクラシカルなスタイルを強調したホンダの400ccアメリカンが、1997年に登場したシャドウ。
エンジンはスティード400の水冷V型2気筒をベースに各部の見直しで低中回転域重視としたものだが、リヤサスペンション構造の違いがスティードとの大きな相違点だ。
スティードがリジットフレーム風モノショックを採用していたことに対して、シャドウではコンベンショナルな2本サスとなり、5段階のプリロードアジャスターを装備して乗り心地を高めている。
スラッシャー、クラシックなど派生モデルが拡充され、2000年代に入っても生産された。
カワサキ・バルカン400
カワサキ400ccアメリカンのルーツとなるのは、1985年登場のEN400だ。搭載する水冷並列2気筒は、GPZ900Rの並列4気筒を半分に割ったようなハイメカで、1990年には名称がバルカン400へと変更された。
EN400はチョッパースタイルのアメリカン、エリミネーター400はドラッグレーサースタイルのアメリカンとして、400ccカワサキアメリカンの双璧を担った。
バルカン400は1994年にEN400へと名称が戻された後1995年にフルモデルチェンジされ、エンジンは水冷55度V型2気筒SOHC4バルブへ変更。大柄な車体に加えてクラシカルスタイルの派生モデルも登場し、400ccアメリカンブームの中で存在感を示すモデルとなった。
ヤマハ・ドラッグスター400
空冷70度V型2気筒OHC2バルブエンジンは、1983年登場のXV400スペシャル、1987年登場のXV400ビラーゴから受け継ぐ名機で、1996年のドラッグスター400によって日本のアメリカンバイクファンから圧倒的な支持を得るモデルへと成長した。
リヤショックユニットをシート下に配置することでリジッド風に仕立てたことで、ロー&ロングのシルエットが強調され、また、車体の隅々までていねいに作り込むことでヤマハらしい美しいスタイルを確立。
スタンダードモデルのほかに、メッキパーツを多用するなどで質感を高めたドラッグスタークラシックもラインナップされた。シャフトドライブ機構によりメンテナンスフリーを実現した400ccアメリカンである点も注目だ。
スズキ・イントルーダー400
1994年に登場したスズキの400ccアメリカンは、上位モデルとなるイントルーダー800と車体を共通とする大柄なボディが特徴。
狭角45度のV型2気筒エンジンは、水冷ながらも空冷フィンを配することで造形美を追求。さらに駆動方式をシャフトドライブとしてメンテナンスフリーを実現していた。
しかしわずか2年後の1996年に車名はデスペラードへ変更、大幅なモデルチェンジが行われた。駆動方式をチェーンドライブとし、倒立式フロントフォーク、アルミキャストホイールの採用などで走行性能を重視しつつ、メッキパーツを多数採用して質感を高めた。
しかし2000年代に入ると車名は再びイントルーダーに戻され、リジッドフレーム風リヤサスを採用するなど、クラシックテイストを盛り込んだモデルへと変貌を遂げている。
1990年代に一大ブームとなった400ccジャパニーズアメリカンモデル。
しかし2020年現在、国内で発売されている国産400ccモデルは1台もなく、250ccモデルでもホンダ・レブルがあるのみという寂しい状況だ。
中古市場での価格も、90年代当時のアメリカンモデルは比較的安値で安定しており、じっくり探せば状態のよいものがリーズナブルに探すことができる。
コロナ禍の影響でなかなか外出しにくい昨今ではあるが、こんな機会だからこそ往時のアメリカンモデルは狙い目かもしれない。
コロナ禍が収束したらゆったりとしたツーリングを楽しんでみてはいかがだろうか。
なお画像ギャラリーでは1990年代に販売されていた400ccアメリカンモデルの画像を掲載しているので、ぜひのぞいてみてほしい。
text:山下 剛/まとめ:モーサイWEB編集部