最終型NSR250R(MC28)はまるで市販レーサーのような足まわり
ちまたでは「NSR250Rで最高なのは1988年型のMC18」というのが定説です。
たしかに1988年型は1989年型とコンピュータが違っていて、公称値(最高出力45ps/9500rpm)には現れない歴然としたパワー差があります。
でも、筆者としてはそれほど人気が高くない最終型1994年型(MC28)をあえて推します。最高出力は40ps/9000rpm、乾燥重量も134kgと、数値上の性能では1988年型の45ps・127kgより劣りますけど……。
1994年型NSR250Rとは、同シリーズの4代目となる最終型(初代=MC16、2代目=MC18、3代目=MC21)ですが、1994年型の何がイイかって?
まず車体と足まわりです。ホントに前後サスペンションの作動性がよく、減衰力の発生も精度が高いんです。これだけ軽いバイクなのにしっかり路面に追従し、安定性があり、もちろん運動性も抜群。決して挙動がキョロキョロしないし、不安定さが出ないんです。
上級仕様のSEとSPでは、フロントフォークがカートリッジタイプ(伸び側減衰力とスプリングプリロード調整機構付き)で、リヤショックがフルアジャスタブル(伸び/圧側減衰力・スプリングプリロード調整機構付き)となります。
普通、この手のモノショックを採用した本格的なスポーツバイクのリヤショックは、プリロードが1G(空車時サス沈下量)の場合の伸び切り──リヤが沈まないキリギリを基準に設定します。
大概のバイクはそうすると、姿勢がよく旋回性も出るんですが、リヤのスプリング感が出過ぎて(跳ね気味になって)路面追従性が落ちてしまい、少しプリロードを緩める方向にしたくなります。
つまり、リバウンド側(伸び側)のストロークを多めにしてやるんです。
昨今の大型スーパースポーツも、初期の設定から少し沈めてあげたほうがいいと思います。
でも、この1994年型NSR250Rは違いましたね。伸び切りでも跳ねるなんてことはなく、さらにプリロードをかけても、それなりに反応するんです。
結局、伸び切りギリギリでセッティングしたんですが、これでもちゃんと路面のキャップを拾い、伸び側減衰力を合わせることができたんです。
フロントフォークの1G(1名乗車時サス沈下量)もレーサー並みに少なく、初期設定でセッティングが出ていました。
とにかく足まわりは、プリロードや減衰力をかけても、普通の市販車みたいに作動性が落ちない!! これはスゴイことなんです。
車体もハードフレーキングではしっかり、コーナリングではしなやか。ちなみに、このモデルからスイングアームが両持ちガルアームから片持ちのプロアームになっています。
それによる効果がどこまでなのかは不明ですが、イイ車体なんです。この1994年型の開発時には、フロントは倒立フォークの採用も検討してたということですが、しなやかさ・軽快性を重視して41mm径正立でのままにした、というのも納得です。
一方フレームやスイングアームは、改良ごとに縦剛性をそのままに、捻じれ剛性をアップし、横剛性を落とす方向になっているので、その辺も効いていそうです。
また、1994年型では従来型からタンク後端が25mm短くなり、窮屈感や後ろ乗り感がなくなってライディングポジションの自由度が増し、ホントに250ccレーサーみたいに操れます(感覚的には、ですが)。
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