天を仰げる乗車姿勢と低中速域で扱いやすいエンジン特性、躊躇(ちゅうちょ)することなく気軽に乗り出せる車格と足着きのよさが魅力のクルーザーモデル。昔も今も、そんなところに魅力を感じているユーザーは決して少なくない。
古くはチョッパーとかアメリカンと呼ばれたジャンルに日本車が登場するのは、1970年代後半のカワサキLTDやヤマハXSあたり。その後最上級モデルでは1000ccクラスまで用意される一大ファミリーとなるが、シリーズを底支えするコミューター的役割を与えられたのが250ccのモデルたちだった。

モーターサイクリスト誌1978年9月号でテストを受けるGX250SP。1977年に登場したGX250のモデルチェンジ版で、カフェレーサー風から一転してキング&クイーンシート装備のアメリカンに変貌を遂げた。
当初は既存のロードスポーツのホイールを変え、アップハンドルやキング&クイーンシートと呼ばれる段付きシートなどで差別化した程度だったが、1980年代に入り専用フレームで本格ロー&ロングスタイルを再現したレブルや、ドラッグマシン風のエリミネーターといったモデルが登場。

専用フレームに新開発の空冷Vツインエンジンを搭載してこの年登場したXV250ビラーゴ(右)と、ビキニカウルにアンダーカウルを装備するエリミネーター250SE
当時の若者の多くはレプリカに夢中で、楽な姿勢を好むオジサンに好まれたが、1990年代に入りスティードやドラッグスターがネイキッドと人気を二分するブームになりそんなイメージも霧消。250もVツインマグナなどの新世代車が各社から登場した。
その後は需要の低迷や規制強化により、残念ながら次々と姿を消していったのはほかのジャンルと同様だが、現在は2代目レブルがその需要を一手に引き受ける人気を博している。これからも250クルーザーが魅力あふれる存在であり続けることは確かであろう。
取っつきやすくて雰囲気満点! 1980〜90年代のクルーザーモデルたち
※見出しの年式およびスペックは、写真のモデル登場時のものを掲載しています。
新感覚のティアドロップ型燃料タンクを採用
ホンダ・CM250T(1980年/乾燥重量168kg・26馬力)

ホンダ・CM250T(1980年/乾燥重量168kg・26馬力)
1977年に発売されたCB250Tホークと同型のバランサー付きOHC3バルブ並列2気筒エンジン車。400ベースで車重は重め。写真のモデルのほかにシングルシート+大型リヤキャリヤを装備するタイプも用意された。
年式を考えれば致し方ないがすでにレア車の部類に入っており、中古相場はタマ数はほぼない。もし探すならば気長に探すようにしよう。
なりは小さくとも造りは本格的
ホンダ・レブル(1985年/乾燥重量138kg・22馬力)

ホンダ・レブル(1985年/乾燥重量138kg・22馬力)
CD125Tの拡大版となるOHC2バルブ並列2気筒エンジンを専用フレームに搭載。リヤタイヤは130幅と、同時期のVFR750Fと同寸のボリューム感で「レブル現象」なる造語ができるほどの人気を博した。写真は92年型。
先代レブルの中古相場は数万円〜30万円前後。新型レブルが人気を博しているが、アメリカンらしい正統派スタイルが好みの人は先代モデルを検討してもいいだろう。
迫力のフォルムで一躍ベストセラーに
ホンダ・Vツインマグナ(1994年/乾燥重量171kg・27馬力)

ホンダ・Vツインマグナ(1994年/乾燥重量171kg・27馬力)
リヤのアルミディッシュホイールや大胆に跳ね上がった右2本出しマフラーなど、ドラッグマシン的な作り込みが特徴。エンジンはVT250F系の挟角90度Vツインを低中速域重視型にリファイン。
フロントにディッシュホイールを装着し、リジットサス風カバーがついたリヤサスペンションを装備したVツインマグナSなどのバリエーションも登場し、2007年まで13年にわたり存続した。
タマ数も中古市場に200台前後と豊富にあり、価格も10万円弱から50万円台までで選ぶことができる。カスタムされた車両が多いので、検討する場合は無茶ないじり方をされていないか念入りにチェックしたほうが安心だ。
400と同様長寿を誇った単気筒アメリカン
ヤマハ・SR250(1980年/乾燥重量124kg・21馬力)

ヤマハ・SR250(1980年/乾燥重量124kg・21馬力)
この年登場したオフ車のXT250と同型のOHC2バルブで、始動方式をセルフ式に変更。
乾燥重量は400をベースとするGX250SPより44kgも軽い。日本では早々に姿を消したが、海外向けは2010年以降まで続いた超ロングセラーモデルである。
とはいえ国内市場ではほぼ壊滅状態なので、購入するのは難しいと考えたほうがいいだろう。
シリーズ共通の豪華重厚路線
ヤマハ・XS250スペシャル(1980年/乾燥重量166kg・25馬力)

ヤマハ・XS250スペシャル(1980年/乾燥重量166kg・25馬力)
GX250SPの発展型で外装を変更、シートなどがいっそう豪華に。翌年にはXS1100ミッドナイトスペシャルと同様、黒塗装に金色のパーツを装備するXS250ミッドナイトスペシャルを限定販売して人気を集めた。
タマ数は少ないものの状態のよい車両も流通しており、相場は20万円〜40万円前後の車両が中心。なかにはカスタムされた状態のよい車両が販売されていることも。
海外向けは今なお現役続行中
ヤマハ・XV250ビラーゴ(1988年/乾燥重量137kg・23馬力)

ヤマハ・XV250ビラーゴ(1988年/乾燥重量137kg・23馬力)
専用フレームに新開発の挟角60度OHC2バルブ空冷Vツインエンジンを搭載。日本ではドラッグスター250と入れ替わる形で終了したが、北米向けはVスター250の名称で現在も販売されている。
常時中古相場に100台前後流通しており、価格も10万円台から存在している。また前述のVスター250が輸入されており、現在も新車で購入することが可能だ。
クラスを超えたロー&ロングフォルム
ヤマハ・ドラッグスター250(2000年/乾燥重量147kg・23馬力)

ヤマハ・ドラッグスター250(2000年/乾燥重量147kg・23馬力)
1996年に発売されてクラストップの販売台数を記録したドラッグスター(400)のロー&ロングフォルムを継承し、ホイールベースを40mm延長、前後ディープフェンダーを採用。2016年型まで存続した。
近年まで販売されていた車両だけに、中古市場に400台以上流通している。相場は10万円〜70万円台と幅広く、それ以外にトライクにカスタマイズされた車両も流通している。
DOHC4バルブの快速アメリカン
スズキ・GSX250L(1981年/乾燥重量154kg・29馬力)

スズキ・GSX250L(1981年/乾燥重量154kg・29馬力)
GSX250Eの派生モデルでホイール径は前19/後ろ16インチ。似た外観でシートやホイール径が異なるGSX250T(前18/後ろ17インチ)も用意された。いずれも最高出力は29馬力となっている。
こちらの車両も現存車両は極めて少なく、市場流通はひと桁台。相場は30万円前後で推移している模様だ。
最後に登場した空冷Vツイン250
スズキ・イントルーダー LC250(1999年/乾燥重量143kg・24馬力)

スズキ・イントルーダー LC250(1999年/乾燥重量143kg・24馬力)
挟角65度空冷OHC3バルブエンジンを採用して1999年11月発売。前年に発売されたOHC単気筒のマローダー250と合わせて充実した布陣を誇ったが、両車とも平成18年規制を前に姿を消した。
最後発ゆえタマ数が少なめで、中古市場では20台前後が流通しているのみだが、ほぼノーマルの車両が多い。価格は10万円台から30万円台がボリュームゾーンとなっている。
常識破りのストリートドラッガー
カワサキ・エリミネーター250(1987年/乾燥重量136kg・40馬力)

カワサキ・エリミネーター250(1987年/乾燥重量136kg・40馬力)
GPZ250Rと同型の水冷並列2気筒エンジンはクラス上限に迫る40馬力を発揮。1490mmのホイールベースや140サイズのリヤタイヤ、リヤフェンダー上に装着されるナンバープレートも斬新だった。
並列2気筒のエリミネーター全体で見ると50台前後が流通しており、価格は数万円〜30万円台となっている。とはいえ年式を考えると状態のよいものは少ないと考えられるので、乗りたい場合はじっくりと腰を据えて探したほうがよさそうだ。
シリーズ唯一のV2エンジン採用
カワサキ・エリミネーター250V(1998年/乾燥重量171kg・38馬力)

カワサキ・エリミネーター250V(1998年/乾燥重量171kg・38馬力)
900ccから125ccまでそろったエリミネーターシリーズ中唯一のVツイン車。最高出力38馬力と先代の特性を受け継ぎつつもクルーザー要素を強めたデザインに。大きな変更もなく2007年型まで続いた。
こちらも比較的最近までラインアップされていたこともあり、タマ数も100台近いため好みの車両が探しやすい。価格も10万円台〜50万円台と幅広い。