ヒストリー

スーパーカブにZ1、CBなど、世界に誇る日本の名作エンジン5機【エンジンで振り返る日本車の歴史 その1】

革新的な機構を導入することで、ライバル勢に対するアドバンテージを築き、後世に多大な影響を与えた日本車のエンジン。当記事で紹介する5機種のエンジンは、2輪の歴史を語るうえで欠かせない名作であり、現在でも世界中で多くのライダーから愛されているのだ。

1958年~ ホンダ スーパーカブシリーズ

1958年の発売以来、抜群の耐久性と経済性が評価され、長きに渡って世界中で愛されてきたスーパーカブ。言わずとしれた「キング・オブ・ビジネスバイク」だが、最近ではビジネス用途だけではなく、趣味の乗り物としての愛好家も増えている。

スーパーカブ50(50cc空冷4ストOHC単気筒 写真は2020年モデル)

初代スーパーカブことスーパーカブC100(50cc空冷4ストOHV単気筒 1958年登場)

もちろん、第1号車のC100に搭載されたOHVエンジンのC100Eと、現行各車で採用されるOHCエンジンのAA04E(スーパーカブ50、クロスカブ50に搭載)/JA10E(スーパーカブ110、クロスカブ110に搭載)/JA48E(スーパーカブC125に搭載)は完全な別物だが、水平単気筒エンジンの基本的な素性は変わっていない。

現行型スーパーカブ50のエンジン。エンジン型式は2012年にリリースされたものと同じAA04だが、クランクケース形状からして従来モデルとは異なる。

ただし、偉大なベーシックと認知されている近年のスーパーカブとは異なり、初代であるC100は当時としては異色の高性能機だったのだ。
同時代のモペッド/小型車の多くが、構造が簡素でパワーが出しやすい2ストエンジンを搭載していたのに対して、C100 は4ストエンジンを選択。それでいて、当時のクラストップとなる4.5ps/9000rpmのパワーを実現し、しかもだれもが気軽に乗れる機構として、革新的な自動遠心クラッチを採用していたのだから。

C100に搭載されるOHVエンジン、C100E。写真のものは「二つ星」と呼ばれる最初期のもの。シリンダーからクランクケースまで、現行品とは大きく形が違うが、キャブレター時代のカブのエンジンとは互換部品も多い。

余談だが、スーパーカブが登場する以前の2輪業界で、シリンダーを大きく寝かせたエンジンを得意としていたのはイタリアで、古豪のモトグッツィに加えて、アエルマッキやモトビなどが、多種多様な水平シリンダー車を生産していた。
現在では縦型Vツイン+シャフトドライブの印象が強いモトグッツィがかつて販売していた横型エンジン搭載車の一例「ファルコーネ」。駆動方式もチェーンドライブだった。

モトグッツィ ファルコーネ(500cc空冷4ストOHV単気筒 1950年登場)。現在では縦型Vツイン+シャフトドライブの印象が強いモトグッツィがかつて販売していた横型エンジン搭載車の一例。駆動方式もチェーンドライブだった

 

1969年~ ホンダ CB750FOUR

量産初の並列4気筒エンジン搭載車。1969年に登場したCB750フォアを語る際には、十中八九以上の確率でこの言葉が使われる。とはいえ、CB750フォアを現代の視点で見て感心するのは、並列4気筒のパイオニアならではの気遣いだ。
もっとも厳密に言うなら、インディアン・フォアやアリエル・スクエアフォア、ミュンヒ・マムートやMVアグスタ600GTなど、CB750フォア以前にも4気筒車は存在した。とはいえ、誰もが気軽に購入できる量産4気筒車は、CB750フォアが初めてだったのである。

CB750FOUR(750cc空冷4ストOHC並列4気筒 1969年登場)

ホンダ製多気筒車の原点で、1960年代の世界GPで無類の強さを発揮したRCシリーズは、DOHC/ショートストローク/ウェットサンプという構造だったのだが、CB750フォアは全高と全幅をできるだけ抑えるため、OHC/ロングストローク/ドライサンプを採用。
また、クランクシャフトと1次減速に注目すると、RCシリーズが組み立て式/ギヤ式だったのとは異なり、CB750フォアは静粛性と生産性を考慮して、一体鍛造/チェーン式を選択していた。

ジム・レッドマンのライディングで、1963年の世界GP250を制したRC164。エンジンは空冷DOHC4バルブ並列4気筒。

言ってみれば国産初の量産並列4気筒エンジンは、考え方という面では、1980年代以降のエンジンでクローズアップされる、小型化や静粛性という要素を先取りしていたのである。

CB750FOURのエンジン。販売開始直後から予想をはるかに上回る注文が殺到。最初期(約7400台)ほどはクランクケースが砂型鋳造なのは有名な話(以降は金型鋳造)。

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