史上空前のバイクブームといわれ「HY戦争」と呼ばれる激しい販売競争もまきおこった1980年代。そのピークといわれる1983年には328万5000台という二輪車の販売台数を記録した。
では一体、昭和の時代にはどのモデルが売れたのか? 弊社刊行の「モーターサイクリスト」誌が当時独自に算出していた販売台数を集計して、クラス別のベストテンを作成。前回はブームの中心といえる存在だった250ccモデルをお送りしたが、第2回目となる当記事では400ccクラスのランキングを紹介しよう。
※注:このランキングはあくまで1989年までの販売台数を当時のモーターサイクリスト誌を参照して独自集計したものです。実際の販売台数とは異なる場合がありますのでご注意ください。
第1位:カワサキ GPZ400R 4万7039台
クラス初となる水冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンをAL-X CROSS(アルミクロス)フレームと呼ばれるダブルクレードルフレームに搭載。
最高出力は59馬力。1985年、1万9814台を販売して400ccクラス1位に。
第2位:ヤマハXJ400/D 4万6918台
エンジンはヤマハ初の400cc4気筒で、最高出力45馬力の空冷DOHC2バルブ。ホイール径は前19インチ、後ろ18インチ。乾燥重量は176kgに抑えられており、750クラスの風格を持ちつつ扱いやすさも兼ね備えていた。
1981年4月の変更で燃焼効率を向上させるYICSを採用したXJ400だが、その後6月にバリエーションモデルとしてXJ400Dを追加。マフラーは4-2-4タイプとなり、車重は180kg。
第3位:ホンダCBR400Fシリーズ 4万3191台
80年代初頭、一言に「400cc4気筒」といってもホンダは水冷V4、空冷直4とまったくことなるタイプのエンジンをラインアップしていたことに驚かさせる。
1982年に水冷V4のVF400Fがデビュー、続いて1983年に空冷直4のCBR400Fがデビューした。
現在のCB400SFが採用する「ハイパーVテック」の先祖のような、回転数に応じて2バルブ/4バルブを切り替えるバルブ機構「REV」を採用(8500回転で切り替わる)。最高出力は58馬力。
1984年5月にハーフカウルを装備した「エンデュランス」を追加。8月にはフルカウルを装備した「エンデュランス特別仕様車」も追加。
さらに翌年1985年にはフルカウル+シングルシートとした「フォーミュラ3」が登場した。
第4位:ホンダCBX400F 4万324台
カワサキZ400FX以降、各社から400cc直4エンジン車が続々と登場していくなか、そのときホンダは400cc4気筒車のラインアップがなかった(既に「ヨンフォア」は古くなってラインアップ落ちしていた)。そこで、「4気筒のホンダ」が満を持して発売したのがこのCBX400Fである。
現在は人気絶版車としてクラシカルな雰囲気が注目を集めているが当時は「スーパースポーツ」という立ち位置で、クラストップの48馬力エンジン、プロリンクサス、インボードディスクブレーキ、ジュラルミン鍛造セパレートハンドルなど渾身の造り込みがなされていた。
第5位:カワサキZ400FX 3万7370台
1975年の免許制度改定以降(「限定解除」制度の導入)、年を追うごとに強くなる400cc直4エンジン車を望む声に応える形で登場。
400ccは2気筒全盛だった時代に颯爽と現れただけあって、デビューイヤーの1979年だけで約1万4000台を販売、カワサキ初のクラストップセールスを記録した。
第6位:ヤマハFZ400R 3万6939台
TT-F3レーサーのFZR400をストリート向けに再現したモデルで、角パイプスチールフレームに最高出力59馬力の水冷DOHCエンジンを搭載。
1987年にフルカウル化されて1989年まで販売が続いた。
第7位:ヤマハFZR400 3万5433台
FZ400Rから7㎏軽量化した新開発エンジンを、FZ400Rのフレームより45%剛性を高めたアルミデルタボックスフレームに搭載。
1987年には排気デバイス「EXUP」を装備した上級バージョンFZR400Rも追加された。
第8位:ホンダVFR400R/Z 3万2677台
TT-F3レーサーRVF400のレプリカ版として1986年に登場。1987年にはプロアームが採用されて旧型オーナーの恨み節(?)がよく聞かれた。
VFR400Zはカウルレス版で教習車として多く使われた。
第9位:ホンダVF400F 2万9989台
400ccクラス初となる水冷V4エンジン搭載車。フロントホイールは当時らしい16インチ。
角型ヘッドライト&ビキニカウルが特徴的だが、1984年にはフルカウル版のVF400Fインテグラも追加された。
第10位:ホンダ ウイング(GL400)2万9492台
縦置きVツインエンジンである点がよく特徴に挙げられるが、エンジンのボア・ストロークは73.0×47.4mmという超ショートストローク型なのも見逃せないポイント。
4バルブの水冷OHV Vツインエンジンは40馬力を発揮した。
車両重量218kgとやや重めだが、マスの集中化が図られていて取り回しは意外と軽かった。
いかがだっただろうか?
当時若者に大人気だったレプリカモデルは少なからず含まれているが、400ccクラスは大人のライダーから支持される面もあり(裏を返せば「限定解除」は狭き門で、多くのライダーにとって実質的な上限排気量のクラスだったわけだ)スタンダードなモデルがランキング入りしている点が特徴と言えるだろう。
70年代後半から80年代前半の短期間で目まぐるしい技術革新&高性能化が行われたのは250ccクラスと同様だ。
次は401cc〜750ccクラスのベスト10をお送りする。
※本記事はモーターサイクリスト2019年11月号を編集・再構成して掲載しています。
(まとめ●モーサイ編集部)