史上空前といわれた、1980年代のバイクブーム。
ピークの1983年には328万5000台の販売台数を記録したほど売れに売れたバイクであったが、ここで疑問に思うのが「いったい昭和の時代にはどのバイクが一番売れていたのか?」ということ。
昔の資料を調査すれば出てきそうな気がするが、実のところ車種別に「そのバイクが実際に売れた数」を把握するのは非常に困難。
工場出荷台数、登録台数などが入り乱れ、当時の各バイク雑誌は独自ルートで得た情報から数値をはじき出していたのが実情だ(特に原付は分かっても東京都のみ)。
今回は弊社「モーターサイクリスト」誌が当時独自に算出していた販売台数を集計して、昭和時代に売れたバイクのベストテンを作成。第1回目はバイクブームの中核となった250ccモデルの紹介だ。
いったいどのようなバイクがランクインしているのか? さっそく見てみよう。
※注:このランキングはあくまで1989年までの販売台数を当時のモーターサイクリスト誌を参照して独自集計したものです。実際の販売台数とは異なる場合がありますのでご注意ください。
第1位:ホンダ・VT250F 17万5187台
人気を博したRZ250の対抗として登場した「NR500の血を引いた全身スーパースポーツ」。4ストながら最高出力35馬力とRZ250と同値を実現。6月からの発売にもかかわらず、初年度の1982年には登録台数は3万台以上を記録している。
1984年には2代目へと進化し、最高出力が40馬力に向上。この年の登録台数は約3万6000台、85年には約3万1000台を記録。また、販売累計10万台記念車も登場した。
第2位:ヤマハ・RZ250R/RZ250RR 7万4596台
1983年に登場のRZ250Rが第2位を獲得。YPVSの採用により、最高出力がRZ350の45馬力に迫る43馬力に向上。リヤにはニューリンク式モノクロスサスを採用するなど、各部の見直しにより戦闘力が大幅にアップ。
1984年にはRZ250RRへと進化。この年追加されたハーフカウル版のほか、オプションでフルカウル化も可能だった。キャブレター変更により最高出力45馬力となっただけでなく、マフラーやブレーキも変更をうけている。
第3位:ホンダ・CBR250R 5万1992台
前年発売のCBR250フォアから1年ほどで大幅変更。フルカウルとなりリヤブレーキをディスク化、テール部が段付きになるなどの変更が功を奏し、年間販売台数2万台を記録。
ヘッドライトが丸目2灯になった2代目は、カウリングもよりレーシーな形状へと改められた。90年にはCBR250RRへと進化。レプリカブームの過熱ぶりを物語る1台。
第4位:スズキ・RG250Γ 4万9436台
量産車初のアルミフレームにレーシーなカウリング、最高出力45馬力のエンジンで大反響を巻き起こしたレーサーレプリカブームの火付け役。翌年には早速マイナーチェンジを受けている。
第5位:ホンダ・ホーク CB250T/CB250N 4万8973台
ヤカンタンクで親しまれたCB250Tは77年発売。ヨーロピアンスタイルのCB250Nは79年、上級版のCB250NAスーパーホークは80年発売。VT250Fが登場する82年まで存続した。着実に売れ続けて上位に進出したモデルだ。
第6位:ヤマハ・FZR250 4万8231台
デザインがとにかくカッコよかったFZR250は、1985年発売のFZ250フェーザーに代わり1986年の12月に発売。
前傾45度並列4気筒エンジンを受け継ぎつつ流行のレプリカスタイルを採用。1988年に排気デバイスのEXUPを採用し、より一層戦闘力を高めた。
第7位:ヤマハ・TZR250 3万9402台
1986年に初代モデルが発売。並列2気筒エンジンをアルミデルタボックスフレームに搭載して、85年11月の東京モーターショーで発表と同時に発売が開始された。
RZ250からの通算で2スト250cc車初の販売台数10万台突破を達成した。
第8位:スズキ・GSX250E/T/L 3万8784台
400と共通の車体を用いる例が多かった250ccクラスにあって、250専用車体に先鞭を付けたのがスズキ。
1981年に初代が発売され、先進のDOHC4バルブエンジンを採用して高い評価を得た。
第9位:ホンダ・NSR250R 3万7911台
1983年にMVX250F、1984年にNS250R/Fを投入するも苦戦続きの末に送り出されたモデルで、1986年10月発売。
翌1987年11月発売の2代目はリミッターカットも容易で「最強のNSR」と呼ばれた。
1980年代終盤の登場ながら爆発的な人気を誇り、見事9位にランクインした。
第10位:ヤマハ・RZ250 3万3450台
大気汚染などの問題から4ストが主流になりつつある中、ヤマハが送り出した“最後の2スト”であるRZ250は1980年に登場。
乾燥重量139kg、最高出力35馬力がもたらす活発な走りが多くのライダーを魅了した。今なお人気の高い名車だ。
いかがだっただろうか?
車検が無く維持費も安い軽二輪クラスは、70年代後半辺りから戦後のベビーブーム時代に生まれた人口の多い世代に受けて、80年には約8000台だった販売台数も83年には約5万8000台へと急伸。豊富な車種展開でバイクブームの中枢を担ったクラスといえるだろう。
次回は400ccクラスの1980年代トップテンをお送りする。
※本記事はモーターサイクリスト2019年11月号を再編集して掲載しています。