ヒストリー

1万7000回転の衝撃!! 大人気となった250cc4気筒レプリカマシン、ヤマハFZR250

東京モーターショー2019のカワサキブースにて発表された250cc4気筒モデル「ニンジャZX-25R」が大きな反響を呼んでいるが、1980年代にあっては国内4メーカーがそろって250cc4気筒モデルをラインアップしていた。
2ストロークマシンが絶大な人気を誇っていた1980年代のレーサーレプリカブーム時代に、2ストロークマシンに負けず劣らず人気があったクォーターマルチマシン、ヤマハFZR250を当時のカタログとともに紹介したい。

 

レーサーレプリカとしては珍しかった250cc4気筒

1986年12月、後に名車と呼ばれるモーターサイクル、ヤマハ・FZR250が発売された。

250cc4気筒=クォーターマルチとしての最初の一台はスズキのGS250FW。1983年の3月に発売されたこのモデルは大きなアッパーカウルが特徴的で、重い車体は俊敏ではなくツアラー的な性格だったといわれる。1983年当時はレーサーレプリカブームという一大ムーブメントが吹き始めた時代。世はレーサーレプリカ一色に染まっており、売上は芳しくなかった。

各社クォーターマルチは存在していたが、そこにレーサーレプリカとして現れたのがこのヤマハFZR250だ。ベースとなったモデルは、クォーターマルチとして超高回転と走りの性能を実現し、最高出力45馬力/1万4500回転を叩き出したヤマハFZ250フェーザー。
そのスタイルは現行モデルにも続くジェネシス思想(※1)に基づき開発された、TT-F1(※2)で活躍したファクトリーレーサー「FZR750」の意匠をくむ丸目二灯のフルカウリングだ。

●1985年鈴鹿8耐ではFZR750を駆る世界GPの英雄ケニー・ロバーツ選手と平忠彦選手が手を組み、そのドラマチックなレース展開に観客が沸いた。鈴鹿8耐の歴史に残るマシンだ。

●その市販公道モデルであるFZR750。ファクトリーマシンと同名のまさにレーサーレプリカである

 

※1 エンジンから車体、ひとつひとつのパーツに至るメカニズムの全てをトータルパフォーマンスに向けて集約し機能させることで高いマン・マシン・コミュニケーションを作り込む技術思想。

※2 市販車をベースに作り上げられたマシンで競うロードレース。1984年から1993年まで開催された。

FZ250フェーザーのパワーはFZR250にも引き継がれていたが、レッドゾーンは1万6000回転から1万7000回転と1000回転高く設定されている。これは点火系の改良や、新設計のエキゾーストパイプ、エンジン自体の信頼性の向上により可能になったものだ。

FZR250

●1万7000回転が真上にセットされたレーシーなタコメーター

当時のブームに合致したスタイルと走行性能、足つき性の良さ……。その高性能ぶりに峠ライダーのみならず男女問わず人気を博し、爆発的なヒットを記録したのだ。走らせるとどんなバイクだったのか、モーターサイクリスト1987年2月号の当時の新車試乗記事から抜粋しご紹介しよう。


『ヘアピンカーブへのアプローチでフルブレーキング。スロットル全閉から倒し込み、バッと右手をひねると、即座にスッとパワーが後輪にかかる。厳密にいえば、スロットルを開けてからジワジワっとトルクが立ち上がっていく時間というものがあるのだが、ごくわずかなタイムラグだ。しかも、スムーズに立ち上がって、ガクッというショックがない。
(中略)
どの回転域で、どういうスロットルの開け方をしても、これである。2,000rpmあたりから上の15,000rpmにも及ぶ回転域を、インジェクションではなくキャブレターでカバーしながら、これは見事だ。フェーザーではこうはいかない。このエンジンのフレキシビリティが、素早い立ち上がり加速を生む。』

『さて、ハンドリングだ。コーナーへ向かって倒し込んだり切り返したりでは、適度な手応えがあるが、重いほどではない。ステップに乗せる体重のコントロールだけで、スッと寝る。そのとき、フロントまわりが少し粘るような感じもあるが、ハンドルに力をかけないほうがスムーズにいく。
(中略)
TZRゆずりのブレーキは、効きもタッチも、前後バランスも文句なしによく、ブレーキングが楽しい。つまり、ワインディングでの絶対性能はかなり高い。それでいて、ビギナーにも走りにくさはなく、さらにウデを磨けば、その分は確実に応えてくれる。バイクに乗る基本的な技術を教えてくれる1台であり、そのプロセスを安全に楽しめるのだ。そこが、FZRの最大の美点である。』

(モーターサイクリスト1987年2月号 試乗レポーター●辻 司)


ファクトリーマシンの称号「FZR」を冠する通り、250ccでありながらその能力は絶大。乗り手の操作に忠実に応えてくれる、テクニックを磨くにも最高なマシンだった。多くのライダーに愛されたのは、「乗りやすさ」と「速さ(絶対性能)」という相反する要素を両立していたからだろう。

FZR250

●1986年当時のカタログから

FZR250はレーサーレプリカ=2ストロークという図式の中に、4ストローク4気筒という新たな図式を生み出したと言っても過言でもない。事実、スズキからGSX-R250、ホンダからCBR250R、カワサキからZXR250など、各社クォーターマルチレプリカの発売が相次いだ。

250cc4気筒はこの時代に頂点を競い合ったものの、度重なる環境規制の強化やネイキッドモデルの台頭によりクォーターマルチのレプリカマシンは衰退。エンジンはネイキッドモデルに転用されたが、それも環境規制の強化により生産終了となって久しい。

レプリカブームの終焉から約20年、冒頭でも述べた新世代のクォーターマルチ「ニンジャZX-25R」が発表された。当時のブームを経験していないライダーにとってはこれがクォーターマルチ初体験となる可能性は高いだろうし、もちろん当時を知るライダーも興味をそそられるに違いない。250cc4気筒、第二のブームが始まるのだろうか。

→次ページ:カタログで見るFZR250

 

ページ:

1

2

関連記事

  1. ダブルスプロケット ハンターカブを育てたメカニズム「ダブルスプロケット」はこうやって…
  2. 第1世代Zの延長線上にあったZ1000J 誕生の舞台裏
  3. 珠玉の並列3気筒! 2000年代名作バイク、トライアンフ・ストリ…
  4. 【二輪車関連老舗ブランドの肖像】No.1:二輪用品市場を牽引して…
  5. 【遙かなるグランプリへ6】世界は知っていた…スクランブルレースか…
  6. 【’80sバイク熱狂時代】バイク技術の進化と淘汰の歴…
  7. 激闘! ヤマハワークスマシン「0W」のすごい歴史①
  8. 【平成バイク大図鑑6】アメリカンブーム、それは速さへのアンチテー…

おすすめ記事

「セローらしさ」って何だ? 初代の構造に込められた“理念” 【時代を駆け抜けたバイクたち2】DUCATI 851・HONDA CBR600F/VF750F編 K&HがBMW Rナインティ用フロントシートと、純正リヤシートレザー張り替えを設定 GSトロフィー2020世界大会開催を記念したふたつのキャンペーンを実施 ホンダデザインの大転換 ~1968年から’69年にかけて起きたこととは?~ 【NEWS】ダイネーゼがレザーアイテムの クリーニングサービスを開始 匿名係長 第1回 BMW R1200GS(空冷最終型)の巻 【ツーリング立寄り処】心も体もシャキッとする!涼湯TOP10 ファンでなくても知っておきたい!? スーパーカブ雑学辞典:後編 ホンダ・ゴールドウイングが17年ぶりにフルモデルチェンジ
BIKE王

ピックアップ記事

  1. ニンジャGPZ900R A2
PAGE TOP