ヒストリー

1990年代後半から人気が再燃したカワサキZ2 1970年代現役当時の評価とは?

 

カワサキ750RS/Z2が目指した世界

オリジナル度の高い極上車なら、昨今では300万円を超えるプライスタグが珍しくない、カワサキ750RS=Z2。
歴史に名を残す名車と言えるのは間違いないし、現在は希少価値が付いていることも考えればその価格を安易に高いとは言えないが、Z2の人気が再燃したのは1990年代後半からで、それ以前は50万円以下の中古車がゴロゴロしていた。

さて、1973年に登場したZ2が現役時代にどんな評価を受けていたかと言うと、1975年までの3年間で約1万6500台が販売され、車名がZ750フォア/FXになった1976~1978年型を含めると、累計生産台数は約2万7000台に達したのだから、これはもう間違いなく大ヒットモデルだろう。
当時の日本の自主規制でZ1は国内で販売できなかったため、排気量と最高出力がライバルのナナハンと同等とされたZ2だが(Z1:903㏄/82馬力→Z2:746㏄/69馬力)、ツインカムヘッドを導入した並列4気筒のフィーリングや、当時はまだ珍しかったテールカウルを取り入れた斬新なデザインには、多くのライダーを虜にする魅力があったと思う。

Z2

Z2が現役だったころの評価を改めて調査するため、1970年代の2輪事情を熟知しているふたりにインタビューを行ったところ、興味深い事実が判明。ひとりは1978年にヨシムラに入社しメカニック兼テストライダーを務め、現在はバイクショップ「アサカワスピード」を営む浅川邦夫さん、もうひとりは八重洲出版で『モーターサイクリスト』『別冊モーターサイクリスト』など長年バイク雑誌に携わり、2誌の編集長も務めた松尾孝昭さんである。
驚くべきことに、ふたりのZ2に対する印象は真逆と言えるほどに異なっていた。

 

カワサキ750RS/Z2の現役時代を知る2人の評価

まずはヨシムラに入社する以前に、Z2を愛車にしていた浅川さんの思い出から。

「確か20歳のころだと思うけど、初めてZ2に乗ったときは、とにかく、びっくりしたね。自分でアレコレと手を入れた愛車のCB750フォアより、マフラーしか交換していないZ2のほうが明らかに速かったんだから。ただし、以後の俺がCBからZ2に乗り換えたきっかけは、ヨシムラパーツショップの準備を進めていた加藤昇平さん(*)の助言かな。元々はCBでレースをするつもりだったけど、耐久性を含めた潜在能力はZのほうが圧倒的に上だよって言われて。実際、当時の富士スピードウェイではZのほうが速かったし、チューニングしたCBのエンジンはよく壊れていたと思う」

*ヨシムラのレースライダー。POPこと吉村秀雄氏の次女、由美子氏と結婚。現在のヨシムラジャパンのベースとなったヨシムラパーツショップ加藤を立ち上げた。1981年、テスト走行中の事故で鬼籍に入る。

Z2

続いては、Z2が登場した1973年に八重洲出版に入社し、同時代のすべてのナナハンを試乗した松尾さんの印象。

「すごくよく出来たバイクだったけど、当時のナナハンでZ2だけが突出していたかと言うと……。私を含めた編集部員とテスターの印象は、そこまでではなかったと思いますよ。やっぱりインパクトという点なら、量産初の4気筒として’69年に登場したCB750フォアのほうが大きかったし、Z2はCBの後に登場したナナハンの中の1台という雰囲気でした。加速感なら2ストトリプルの750SSのほうが印象的でしたね。もっとも、本来の姿であるZ1が国内販売されていたら、印象はまったく違ったでしょう」

カワサキ750RS/Z2、ノーマルの完成度の高さ

ふたりの話をまとめると、Z2は速さを追求する人にはベストだったものの、そうでない人とっては、GT750やTX750などと同等の存在だったということになる。1970年代の2輪シーンを現役で体験していない筆者から見ると、デビュー当初のZ2は、すべての面でライバル勢を圧倒した衝撃的な1台だという印象が強いが……。
とはいえ、誕生から46年以上が経過して、絶対的な動力性能が重要事項ではなくなった今、予備知識抜きでZ2に触れ、そして走らせたら、やっぱりだれだって感動するんじゃないかと思う。流麗なスタイルは、どんな角度から見てもタメ息が出るほど美しいし、重厚さと軽快さを程よい塩梅で両立した乗り味を、気持ちいいと感じない人はいないだろう。

Z2

もちろん中にはパワー不足を訴える人がいるかもしれない。でもZ2には気軽に高回転域が使えるという魅力があるし、パワー不足を言い出したらキリがなくなるので(Z1だって以後の1015㏄モデルと比べたらパワー不足だ)、筆者はナナハンならではの価値を評価したいのだ。

ちなみに、Zシリーズの世界には、ひと昔前はカスタムしてナンボという風潮があったのだが、少なくともZ2とZ1の初期モデルに限っては、近年ではノーマル・オリジナル派が主流になっている。事実、今回の撮影で久しぶりにZ2をじっくり観察し、ノーマルの完成度の高さに改めて感心した僕も、あえてカスタムする必然性はほとんど感じなかった。

→次ページ:今なお高い人気を誇るZ2、完成度の高い各部を観察する

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