ヒストリー

短命に終わったホンダ渾身の大排気量2ストマシン、NS400Rってどんなバイク?

●奥に同様なカラーリングのワークスNS500(スペンサー車)を並べる、ロスマンズカラーのA4版一枚物カタログ。これ以外に標準車(トリコロール)の10ページ構成のカタログも存在し、そちらではNS500とのメカの近似性を比較しており、資料性が高い。

’85年5月10日に発売されたWGPレプリカ・NS400R

ホンダがGPでのレース活動を再開したのは’79年。
これは4サイクルのNR500による挑戦であったが、ついに一勝もできず主力機を2サイクルのNS500へと移行。天才F.スペンサーを擁してヤマハとの接戦の末、勝利を再び勝ち取ったのは’83年のことだった。

ホンダ初のアルミフレーム採用車として’84年に投入されたNS250Rは、前年型MVX250Fでの反省を生かして新設計のV型2気筒に転換。その名に恥じぬ完全なレーサーレプリカスタイルも実現しており、その上級版として’85年に発売されたのがNS400Rだ。デビューは’84年秋のIFMAケルンショー。

NS250R(1984)。市販レーサーRS250Rと並行して開発が行われた、ホンダ初のレーサーレプリカ。前輪16インチにアンチダイブ機構TRAC、排気デバイスATACなどの装備はNS400Rに先んじて採用。なお、より安価な鉄フレーム+ノンカウルのNS250Fも併売された
’83年発売のMVX250F。後ろバンクの焼き付きが多発し、ホンダが対策に追われたモデルだ

心臓部はMVX250Fと同型式の前2気筒、後1気筒の水冷V型3気筒。
実はMVX250Fの上級版としてMVX400Fを販売する計画があったのだが(販売店向け内部資料が存在)、MVX250Fの不振により量産は中止され、心臓部がNS400Rに流用されたと言われる。

NS500の心臓部は前1気筒、後2気筒でNS400Rとは逆の配置ながら、Vバンク間に3つのキャブレターを収めている点や、アルミ角パイプを用いたダブルクレードルフレームの形状はワークスNS500によく似ている。ホイールデザインについても特徴的なNSコムスターを再現しており、この点もRZVやRG-Γよりレプリカ度は高い。

●NS400Rの型式名はNC19。ロスマンズ仕様車の正式な色名称はアリューシャンブルー×シャスタホワイト。標準車に対するスペシャルエディションとして設定されたが、価格も発売日も同じである
●こちらは標準のトリコロール車、正しくはファイティングレッド×シャスタホワイト。ロスマンズも含め車台番号はNC19-1000026〜

ただ排気量は387㏄のみの設定でヤマハやスズキのような500㏄版が存在しない。
より多くの中型免許ユーザーへ向けた対応と言えるが、このためリアルGPレプリカとは呼べず、NS500Rがあればと惜しまれる点である。なお、輸出仕様も存在し、フルパワー仕様は72ps/9500rpmを公称。また、ホンダ製公道用2サイクル車としては最大排気量となる。

NS400Rが投入された’85シーズンは、ホンダのF.スペンサーが250/500㏄両クラスでダブルタイトル獲得の快挙を成し遂げている。NS400Rもまた一代限りであったが、以降はNSR250Rがその役目を担っていくことになる。

ホンダNS400R 主要諸元

●エンジン 水冷2サイクルV型3気筒ピストンリードバルブ 57.0×50.6㎜ 総排気量387㏄ 圧縮比6.7 気化器TA09 点火方式CDI 始動方式キック
●性能 最高出力59ps/8500rpm 最大トルク5.1㎏m/8000rpm 燃費29㎞/ℓ(60㎞/h)
●変速機 6段 変速比①2.500 ②1.714 ③1.333 ④1.111 ⑤0.965 ⑥0.866 一次減速比2.481 二次減速比2.500
●寸法・重量 全長2025 全幅720 全高1125 軸距1385 最低地上高135 シート高780(各㎜) キャスター27°05’ トレール100㎜ タイヤサイズⒻ100/90-16-54H Ⓡ110/90-17-60H 乾燥重量163㎏
●容量 燃料タンク19.0ℓ オイル2.0ℓ
●発売当時価格 62万9000円/1985年5月10日

  1. 【比較】新型『GB350 C』と人気の『GB350』の違いは?ざっくり10万円強も価格差……ちょっと高いんじゃない?と感じる人へ!

  2. 新型『NX400』ってバイク初心者向けなの? 生産終了した『400X』と比較して何が違う?

  3. 冬は寒いのになんでバイクに乗るの?実は『他の季節よりも○○な魅力』が5つある!

  4. CBR250RRに乗る女子高生ライダーが『CBR400R』に乗った感想「最高です。欲しくなりました」

  5. ベテランライダーが『CBR650R E-Clutch』に乗って感じた楽しさ

  6. 寒い時期はバイクに乗らない人へ!愛車を冬眠させるなら「4つの〇〇+α」をやっておけばずっと長持ち!

  7. 還暦からセカンドライフをスタートさせた『Rebel (レブル)1100 <DCT>』のオーナー

  8. CL250はセカンドバイクじゃない。この250ccは『メインの1台』になり得るバイクだ!

  9. Rebel 1100〈DCT〉は旧車を乗り継いできたベテランをも満足させてしまうバイクだった

  10. 定年後のバイクライフをクロスカブ110で楽しむベテランライダー

  11. CL250とCL500はどっちがいい? CL500で800km走ってわかったこと【ホンダの道は1日にしてならず/Honda CL500 試乗インプレ・レビュー 前編】

  12. 【王道】今の時代は『スーパーカブ 110』こそがシリーズのスタンダードにしてオールマイティー!

  13. 新車と中古車、買うならどっち? バイクを『新車で買うこと』の知られざるメリットとは?

  14. ビッグネイキッドCB1300SFを20代ライダーが初体験

  15. どっちが好き? 空冷シングル『GB350』と『GB350S』の走りはどう違う?

  16. “スーパーカブ”シリーズって何機種あるの? 乗り味も違ったりするの!?

  17. 40代/50代からの大型バイク『デビュー&リターン』の最適解。 趣味にも『足るを知る』大人におすすめしたいのは……

  18. ダックス125が『原付二種バイクのメリット』の塊! いちばん安い2500円のプランで試してみて欲しいこと【次はどれ乗る?レンタルバイク相性診断/Dax125(2022)】

  19. GB350すごすぎっ!? 9000台以上も売れてるって!?

  20. “HAWK 11(ホーク 11)と『芦ノ湖スカイライン』を駆け抜ける

アバター

モーサイ編集部

投稿者の記事一覧

1951年創刊のモーターサイクル専門誌。新車情報はもちろん、全国のツーリングライダーへ向けた旬な情報をお届けしています!

モーターサイクリストは毎月1日発売!

おすすめ記事

【NEW ITEM】ガーミンよりバイク専用ナビ「zumo396」が発売 トライデント660 トライアンフ 【試乗速報】トライアンフ トライデント660「日本では98万円!ベテランライダーも満足できる超優秀3気筒マシン」 実は日本と似ている!? ヨーロッパの二輪免許〈中免〉的制度や〈大型の限定解除〉もある【Vento Italiano N.2】

カテゴリー記事一覧

  1. GB350C ホンダ 足つき ライディングポジション