レーサーレプリカブームの渦中に生まれ、3社からほぼ同世代に花開いたGP500レプリカは鮮烈な印象を世に与えたが、いずれも基本的に一代限りと言え、その後の発展もなかった。今回はそれぞれのマシンの誕生と時代背景、メカニズムや仕様についてカタログとともに解説。今回はヤマハ。RZV500Rの紹介だ。
文●髙野英治
※本記事は別冊モーターサイクリスト2008年7月号に掲載されているものを再編集しています。
RZV500R YAMAHA ’84年5月15日発売
2サイクルスポーツ車の先駆にしてヒットメーカーであったヤマハは’84年5月、RZ系の頂点に君臨する4気筒車にしてロードレースの最高峰GP500のレプリカマシン、RZV500Rを発売した。
デビューは’83年9月のパリショーで輸出名はRD500LC、続く東京モーターショーでも国内仕様が発表された。
K.ロバーツやE.ローソン、平忠彦などのスターライダーが駆るYZR500を強力にイメージさせるRZVは多くのライダーにとって羨望(せんぼう)の的であったが、750㏄クラスより高い価格設定や免許制度の関係から、だれにでも買える気軽なモデルとは言えなかった。
水冷V4エンジンはVアングルを50度としてバランサーを備えた2軸クランク型式で、前バンクはクランクケースリードバルブ吸気+前方排気、後バンクはピストンリードバルブ吸気+後方排気。
回転数に応じて排気タイミングを最適化するYPVS(’83年のRZ250Rで採用)も備え、国内仕様では自主規制から64psに抑えられたが、輸出仕様では88psを公称。
この心臓部をアルミの角パイプダブルクレードルフレームにリジッドマウント。
RZ250RR(1984)
リヤショックはリンクを介してエンジン真下に配置することで低重心化を実現、またショートホイールベース化にも寄与しており、これはRZ250Rの1385㎜より短い。
前輪16インチにダンピングアジャスター付きセミエア式フォークにはアンチノーズダイブ機構も備え、トリプルディスクブレーキはベンチレーテッド式と、’80年代のレプリカらしいギミックを多数採用していた。
レプリカの原型はV4初搭載の’82年型OW61もしくは’83年型OW70と目されるが、RZVのダブルクレードルフレームはむしろスクエア4時代のOW54や60あたりに近く、リヤショックの配置も異なる。
だがヤマハの2サイクルV4エンジン搭載車は後にも先にもRZVをおいてほかになく、その意味でYZR500レプリカと呼べる唯一の存在である。
なお機種コードは51X(車台番号51X-000101〜)で、’84年12月発売の後期型では1GG(51X-020101〜)となり、速度計のレッドゾーンを廃止、トップブリッジ形状やCDIを変更、オイルタンク容量を400㏄増すなどの少改良がなされた。
車体色はカタログ表記上では“ホワイト”のみだが、正確にはホワイト×チャピイレッドである。
ヤマハRZV500R 主要諸元
●エンジン 水冷4サイクルV型4気筒ピストン/クランクケースリードバルブ 56.4×50.0㎜ 総排気量499㏄ 圧縮比6.6 気化器VM26SS 点火方式CDI 始動方式キック
●性能 最高出力64ps/8500rpm 最大トルク5.7㎏m/7500rpm 燃費31㎞ /ℓ(60㎞/h)
●変速機 6段 変速比①2.400 ②1.684 ③1.363 ④1.166 ⑤1.043 ⑥0.958 一次減速比2.225 二次減速比2.533
●寸法・重量 全長2085 全幅685 全高1145 軸距1375 最低地上高145 シート高780(各㎜) キャスター26°00’ トレール95㎜ タイヤサイズⒻ120/80-16-60H Ⓡ130/80-18-66H 乾燥重量173㎏
●容量 燃料タンク22.0ℓ オイル2.0ℓ
●発売当時価格 82万5000円/1984年5月15日