今ここに、青春期にあこがれた2サイクル最強の市販車たちがいる。
それらWGPレプリカは、改めて乗ってみると現代でも十分通用するポテンシャルを有していることに気づいた。
’80年代は、現代では味わうことのできないであろう“上昇気質”が息づいているのである。
今回は3台のWGPレプリカを試乗した印象を、編集部員とライターによる座談会形式で紹介していく。今回はその後編をお送りしよう。
※本記事は別冊モーターサイクリスト2008年7月号に掲載されているものを再編集しています。
見て楽しむ? 乗って楽しむ?
髙野:車体まわりに関して諸元表を見ると、NSは27度と最もキャスターが寝ている。Γは23.5度。RZVは26度。

●HONDA NS400R

●SUZUKI RG500Γ

●YAMAHA RZV500R
阪本:Γはキャスターが立っていて寝かせやすい気がするけれど、着座位置に対してヘッドパイプが高いから、そういう気がしないのかな。立ちが強いと当時のインプレッションにもあったけれど、改めて乗ってみても、確かにそんな印象があったな。
中村:ヤマハは、RZVがアルミフレーム初めてでしょ。リヤショックユニットもエンジン下にある(ニューリンク式モノクロス)特異な構造だし。初作ならではといったツメの甘さが出ている気がしないでもないな。
髙野:Γは高性能だけれど、一番疲れる。RZVはツーリングにも使えそうだ。NSはその中間かな。ヤマハはコーナリングで適度な粘りがあります。
中村:ヤマハは保守的な部分がどこかにある。市販車として、万人のライダーがきちんと乗れるような感じかな。OW-60をベースにRZVは開発されているものの、もはや別物だよね。スズキはこうと決めたらどこまでも行く感じ。例えばΓの新車発表会で、メーカーはΓのよさを説明する際、レーサーであるRGΓ500といかに同一であるかを力説していたみたいだから。
髙野:いずれにせよ、’80年代GPレプリカにはまった人にはかけがえのない存在だった。当時の雰囲気を十分に味わうことができるし。だから、個人的には500ccレプリカも一代限りではなく、続いていてほしかった市販車カテゴリーだと思う。
縞田:もうちょっと進化した姿が見たいというのは高野さんと同感です。現在、モトGPは4サイクルですが、ツインスパーで前後17インチの公道版NSR500やTZR500とかあってもよかったんじゃないかな、と。バレンティーノ・ロッシも「地球上で最もエキサイティングな乗り物だ」と最終型のNSR500を評価してたし。そういえば、ビモータのデュエなんてモデルがありましたね。インジェクションシステムに不具合が出て、数台が輸入されただけだったようだけど。
中村:現在の目からすると、WGPレプリカとして考えるとスタイリングも異なるし、走ると手強い部分もある、そこが現行の優等生のバイクと違って楽しい部分でもある。
阪本:現行スーパースポーツで走っていて、こういうバイクが後から追いついてきたら、迫力があって怖いと思うね。
髙野:つまり、フェラーリとかと一緒。あれは、首都高を流しているだけで、すごくいい音だし。
中村:これらのモデルも製造から30年前後が経過し、クラシックバイクと言える部類なのかなぁ。
縞田:でも、足まわりとか手を入れたら、けっこう走るような気がするね。

YAMAHA RZV500R●RZVの国内仕様のチャンバーは径を絞るため入り口にパイプが溶接されており、それを取るとフルパワーに近い仕様となる
中村:“新車当時のままを維持する”というクラシックバイク趣味からすると、今回のモデルたちはどっち付かずな存在と言えるけれど、走らせることによって、これらのモデルはその存在の輝きを増すとは思う。
阪本:’80年代以降はバイクの進化度合いが緩やかなのかもしれない。ちょっと手を入れてやると、現代のバイクと比べても十分通用する性能を発揮するからね。
→次ページ:試乗後に思うこの時代の「熱さ」とは…?
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