ヒストリー

カワサキ渾身のスーパースポーツは超好印象! ’07-08 Ninja ZX-6Rの実力を振り返る

 

受け継がれてきた直進性のよさ。ハンドリングはグッと素直になった

注目のエンジンフィールは、それほど神経質ではなく、扱いやすさを覚えるもの。
せいぜい50㎞/h程度で流れる市街地を走るときでも、スロットルレスポンスに不足はなく4000rpm未満を使う領域でも非力さはない。
もっとも十分に太いトルクが立ち上がってくるのは4500rpm以上である。低いギヤで走れば、街中でもあってもZX-6Rのたくましい出力特性をかいま見ることができるだろう。

●半ツヤのシルバーリングで化粧された丸形のタコメーターはフルスケール2万rpm。右側に四角い液晶モニターを組み込むデザインが個性的だ。タコメーター右隅の液晶ディスプレイはギヤポジションインジケーターとなっている。右の速度計はデジタル表示式。トリップメーターはシングルだが、時計機能を備えている。右手スイッチでストップウオッチモード、左手スイッチではラップタイムの計測モードを操作できる。左側スイッチボックスには、人指し指操作のパッシングはあるが、ハザードはない

決して軽すぎないクランクマスと、進化した燃料噴射制御は、ライダーのスロットル開閉操作に対して俊敏かつスムーズなレスポンスを発揮し、ギクシャク感はない。
その扱いやすさは大きな魅力となっている。

慎重に出力特性を探ると4500rpmから本領発揮を感じさせてくれ、太く柔軟なトルクがもりもりと膨らんでくる。
さらに8500rpmからは加速度的に吹き上がり速度を増しながら強烈なパフォーマンスを発揮し、車体を前へとダッシュさせる勢いはすさまじい。

気がつくとレブカウンターの針は1万4000rpmをオーバーし、そのまま伸ばせば1万6000rpmから始まるレッドゾーンに難なく飛び込んでいく。9000〜1万4000rpmの領域を駆使する走りは心底エキサイティング。
このカテゴリーでトップパフォーマンスを目指したZX-6Rの神髄を味わうことができる。

ちなみに高速道路をクルージングするときトップギヤ100㎞/hのエンジン回転数は5700rpm。
流れの早いところでは7000rpmを超えるようなこともあったが、振動は皆無と言えるほどにスムーズな回転に終始し、バックミラーの像もクリアで快適なものだった。

また峠を走るとき、エンジンブレーキの効きのよさも印象に残った。
派手なシフトダウンでコーナーに進入してもバックトルクリミッターのおかげで後輪のグリップを失いにくい点もうれしい。
高回転域と低いギヤを使いつつギクシャクさせないためには、さすがに慎重なスロットルワークが必要となる。
だが、操作は難しくなくバイクをスムーズに走らせやすい。その調教された出力特性は、峠やサーキットを舞台にするスポーツ走行でも大きな武器となるだろう。

前後ブレーキのバランスは上々。もちろん効力は十分で、鋭いがその効き味は穏やかな印象である。
フロントはフィンガータッチで自在な効きが得られ、コーナリング中のスピード調節も容易なものだった。

●フロントは300㎜径のディスクローターをセミフローティングする。厚さ6㎜のペタルディスクは大きなヒートマスを持ち、放熱性にも優れた特性。ラジアルマウントの対向4ピストン式キャリパーはニッシン製。リヤは210㎜径、5㎜厚のペタルディスクにトキコ製ピンスライド式キャリパーを採用

●ブリヂストン・バトラックス015を装着している。前後ともに17インチサイズで、フロントは120/70偏平、リヤは180/55偏平ラジアルのZRコード。レーヨンとアラミドの複合構造が採用されていたモデルだ

そしてハンドリングも素直なものに大きく進化した。
代々ZX-6Rの傾向として、直進性の強さとそのスタビリティの高さにその個性があったが、一方でコーナーへと向きを変えていくときの車体の追従性に抵抗感があった。

しかし、’07-08型ではそれがなくなっている。落ち着いた雰囲気は十分あるのに、直進を維持しようとする抵抗があまり感じられず、思いのままに向きを変えていける。
ワインディングでの切り返しでも車体は軽くレスポンスし、ライン取りはまさに自由自在になる。

スタビリティのよさも車体の重さを伴う感覚ではなく、車体の動きは軽快だが、車体をリーンさせる、あるいは戻る(立つ)ときの挙動が穏やかなのである。

●チェーンラインを通す左側は、メインのアルミ角断面アームに補強を加えたトラス構造。右側はアルミプレス成形材が組み合わされている。リヤサスペンションはボトムリンク式ユニトラック

先代のモデルでは、どちらかと言うと高速コースで強みを発揮するバイクだと思っていたが、このZX-6Rはタイトなコースも得意とし、減速から旋回への扱いやすさにたけており、立ち上がり加速にも優れている。
タイトなコースでも柔軟に対応できる扱いやすさに、バランスの取れた高性能ぶりを見た思いだ。

 

心底エキサイティングな高回転域は、乗り手の脳内回路を確実に覚醒する

それにしても今回ZX-6Rに乗って、僕は元来この手のバイクが嫌いじゃないということを再認識した。
取材撮影以外でも伊豆・箱根へ走りに行ってしまったのは、ZX-6Rにそれだけの魅力と、それを操る楽しさが存分に備わっていたということだろう。

●ショーワ製倒立式フロントフォークのトップエンドには、テンション側のダンピング調節が装備されている。コンプレッションの調節はボトム側に装備する

僕の脳内はすっかり若返ってしまった。
僕は数着のレーシングスーツを持っているが、どれも古いものばかりになっていた。
もう必要はないだろうと新調しなくなって久しかったのだが、今回の試乗を機に新しいレーシングスーツをオーダーしてしまったのだった。

 

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モーサイ編集部

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