TRIUMPH STREET TRIPLE
伸長を続けている世界のミドル市場に英国の老舗であるトライアンフが投入した特徴的な並列3気筒エンジンを搭載するスポーツモデルがストリートトリプルだ。
十分な動力性能と高い運動能力を有し、世界中で評価され人気を得ているが、発売当時のインプレッションはどのようなものだったのか振り返ってみよう。
文●野口眞一 写真●岡 拓
※本記事は別冊Motorcyclist2009年12月号に掲載されていたものを再編集しています。
独自性のある並列3気筒を積むエキサイティング・ネイキッド
車両概要
’90年に復活したトライアンフは、当初並列3/4気筒を積むスポーツ車をラインアップし、その後2気筒モデルも加えて着実に勢力を伸ばしてきた。
そんな新生トライアンフが、同社のアイデンティティともなっている並列3気筒エンジンを搭載するミドルスポーツとして開発し、’07年秋に発売した機種がストリートトリプルである。
![](https://mc-web.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/09/th_134-2_kiri.jpg)
●ストリートトリプル
そして約1年後、ハイグレードな足まわりや専用シート/ハンドルを装備して追加された上級仕様がストリートトリプルRだ。
![](https://mc-web.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/09/th_134-3_kiri.jpg)
●ストリートトリプルR
先にデビューした3気筒ミドルSSのデイトナ675と基本を同じくする高性能なパワーユニットと、軽量コンパクトなシャシーとのパッケージングで生み出されたストリートトリプル/Rの戦闘力は高く、丸目2灯の個性的なデザインも魅力で、欧米をはじめ世界中で高い人気を得ている。
ちなみに’09年度は約9500台の販売実績を挙げ(トライアンフの全モデル販売台数の約2割)、日本でもこれまでに700台以上の販売を計上している。
STDもRもデビューから基本的な造りは変わらず、2010年モデルも基本的に車体色の変更程度にとどまった。
STDは従来の黒、白は継続で緑が消滅、Rは従来どおりマットグラファイトとオレンジの2色だ。
税込み価格は両タイプとも据え置きで、スタンダードが99万7500円でRが114万4500円(2010年当時の価格)。
軽量・コンパクトに作り込まれ力感が凝縮されている
詳細解説
今回の撮影車両(試乗車も同じ)は’09年型のスタンダード車で、純正アクセサリーのバイザーとスクリーンを装着。
車体はコンパクトでエンジンまわりは力がギュッと凝縮されている感じ。
全体的なデザインも躍動的で元気のいい走りを予感させる。また大胆にカットされたテールも特徴的である。
↑昨今、複雑な造形やデザインのヘッドライト採用車が多いため、丸目2灯のマスクはかえって個性的に見える。
リヤビューはリヤシートの左右脇という高い位置にマウントされたステンレス製サイレンサーが目立つ。
↑ハンドルバーは幅がやや広めで、形状もフラットに近く、絞りや垂れ角も小さめだ。
↑主メーターはデジタル速度計とアナログ式回転計の一体デザインで、回転計のレッドゾーンは1万3000rpmから。
左側の多機能デジタルパネルには、時刻、ギヤポジション、瞬間燃費、平均燃費などが表示され、その左にはインジケーターランプが4個並ぶ。
↑Rのハンドルまわり。
基本的な装備はスタンダードと変わらないが、Rはテーパードタイプのマグラ製アルミハンドルバーを装着。
↑燃料タンクは上部がエラを張ったようなデザインでニーグリップしやすい。
タンクキャップはエアプレーンタイプ。容量は17.4ℓ。
↑左側のスイッチボックスはディマー、ウインカー、ホーンの各スイッチが装備され、右側はキルスイッチとセルボタンが付く。
↑デイトナ675と共通のアルミフレームにリジットマウントされる水冷並列3気筒DOHC4バルブエンジンはボア・ストローク74.0×52.3㎜、排気量675㏄。
基本設計はデイトナ675と共通で、ブラック仕上げの外観も同様だが、SSのデイトナとは特性や性能がもちろん異なり、専用のカムシャフトを採用するなどして、ネイキッドスポーツにふさわしい低中回転域のトルクも大切にしたエンジンに造り込まれている。
表情豊かで面白みもあり、108㎰、7.0㎏mの性能も十分である。
↑リヤサスはボトムリンク式モノショック。スタンダード車で調整可能なのはプリロードのみだが、Rは伸び/圧側の減衰力も調整できるフルアジャスタブルタイプ。
↑シートはスポンジが薄めでやや前下がりの形状だが、座面はそれなりの広さで座り心地は悪くない。前後移動の自由度もある。
↑Rのシートは基本形状はスタンダードと共通だが、前後2ヵ所に切り返しのステッチが入るツートンのレザー仕上げで質感が高い。
↑スタンダード車のフロントブレーキは片押し2ポットキャリパーと308㎜径ディスクのセットをダブルで装備。倒立フロントフォークは41㎜径で調整機構はなし。
↑Rのフロントブレーキは対向4ポットのラジアルマウントキャリパーと308㎜径ディスクの組み合わせのダブル装備で、マスターシリンダーもラジアルポンプを採用。
また、倒立フォークも太さは同じだが、スタンダードとは別物のフルアジャスタブルだ。
↑リヤブレーキは220㎜径ディスクと1ポットキャリパーのセット。こちらはRも共通。
↑車載工具はシート裏に固定される六角レンチが1本のみ。
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