※本記事は別冊Motorcyclist2008年1月号に掲載されていたものを再編集しています。
空前のバイクブームが要求した、2サイクルマシンの進化
’88年はレプリカブームの頂点と言える年だったが、本稿ではそこに至るまでの過程と、その衰退に至るまでを振り返ってみたい。
レーサーレプリカの原点については諸説あるが、国産2サイクルスポーツ転換期の祖は’80年のRZ250とする声が多い。
RZはスタイルこそ今日で言うネイキッド的なものだが、専用設計の水冷2気筒やモノショックの採用は当時のTZレプリカと言え、何より志がスポーツマインドにあふれていた。
またこのころ、全国的なバイクブームを背景に中型車をメインとしたプロダクションレースが数多く開催された。
Z400FXやCBX400Fなどでレースを戦うファン層の急増も後のレプリカブームの礎(いしずえ)になったと言え、これらはレーサーレプリカとは呼べなかったもののF3ベース車ではあり、アフターパーツおよび用品メーカーもこの波に飛び乗った。
’83年、真っ先にレーサー的なカウリング・セパハン・アルミフレームを採用したのはスズキのRG250Γであり、装備の面からここをレプリカの原点とする見方もある。
Γはファンが長年待ち望んだフォルムとアイテムの具現化であり、他社も当然これに追随。
’83年以降ホンダはMVXからNS、ヤマハはRZ-R、カワサキはKRと“四つ巴(どもえ)”の競争へ発展していったのである。
さらに’84年にはヤマハRZV500Rが登場、翌’85年ホンダは3気筒のNS400R、スズキはスクエア配置4気筒のRG400/500Γを発売、GP500レプリカはカワサキを除く3社から発売されたが、これらは基本的に一代限りで発展はせず。
一方4サイクル400も進化を遂げ、年を追うごとに戦闘力を高めた。
このころのレプリカは前輪16/後輪18インチが主流で、フレームはスチールもしくはアルミ製のパイプ材を組み合わせた構造が特徴であった。
’83 SUZUKI RG250Γ
市販車初のアルミフレームにフルカウル(アンダーカウルはオプション)、セパハンに前輪16インチと当時ダントツの装備と商品性を誇った初代Γ。
翌’84年型ではマルチリブフレームを採用し、いち早くスポンサーカラー仕様(HB)も設定された。
1983年2月20日発売
エンジン:水冷2サイクル2気筒
車重:148kg
最高出力:45ps/8,500rpm
最大トルク:3.8kgm/8,000rpm
当時価格:46万円
’83 HONDA MVX250F
ホンダ初の2スト250㏄スポーツで、エンジンはNS500と同様な水冷V型3気筒(ただし前2気筒、後1気筒でGPレーサーとは逆配置)を採用したが完成度は低く、初期生産車にエンジントラブルが相次いだのは有名。
スタイルもVT250Fと共通で不評だった。
1983年2月1日発売
エンジン:水冷2サイクルV型3気筒
車重:155kg
最高出力:40ps/9,000rpm
最大トルク:3.2kgm/8,500rpm
当時価格:42万8000円
’83 YAMAHA RZ250R
RZ250の後継機で、フレーム形状を大きく変え、トリプルディスクや排気デバイスYPVSも採用してさらに装備を充実させた改良型。
翌’84年型ではセパハン、アルミサイレンサーを備え、ハーフカウルも装備したRZ250RRも投入された。
前後輪18インチ。
1983年2月1日発売
エンジン:水冷2サイクルV型3気筒
車重:162kg
最高出力:43ps/9,500rpm
最大トルク:3.4kgm/8,500rpm
当時価格:39万9000円
’84 HONDA NS250R
MVXのV型3気筒から一転、V型2気筒の新設計エンジンをアルミ角パイプフレームに搭載して’84年に発売。
市販レーサーRS250Rと基本設計を共有した高性能車で、ノンカウル+スチールフレームのNS250Fも併売。
翌’85年にはV型3気筒のNS400Rも投入された。
1984年5月25日発売
エンジン:水冷2サイクルV型2気筒
車重:161kg
最高出力:45ps/9,500rpm
最大トルク:3.6kgm/8,500rpm
当時価格:53万9000円
’84 YAMAHA RZV500R
2軸クランクの水冷V4をアルミ角パイプフレームに搭載するYZR500のレプリカマシン。
翌’85年にはスズキもRG500Γをリリースするが、当時世界GPにワークス参戦していたヤマハのほうがイメージ戦略的には有利だった。
ある意味時代の頂点と言えるマシン。
1984年5月15日発売
エンジン:水冷2サイクルV型4気筒
車重:194kg
最高出力:64ps/8,500rpm
最大トルク:5.7kgm/7,500rpm
当時価格:82万5000円
’84 KAWASAKI KR250
’84年当時すでにカワサキはGPから撤退していたが、往年のレーサーKRレプリカとしてリリース。
水冷タンデムツインを継承し、新たにアルミフレームや前輪16インチも採用したが、扱いにくさとレプリカらしからぬスタイリングとで人気は低迷した。
1984年5月25日発売
エンジン:水冷2サイクルV型2気筒
車重:161kg
最高出力:45ps/10,000rpm
最大トルク:3.7kgm/8,000rpm
当時価格:49万8000円