さて、前回電動アシスト自転車の元祖とも言えるホンダ・ピープルを紹介して、ちょっとした話題になっている(https://mc-web.jp/archive/history/13192/)と紹介したが、今回はその話題の発端となった門前秋良さん(Twitterアカウント:https://twitter.com/Amommae?s=17)の愛車遍歴(?)を紹介しつつ、ピープルの維持をどのように行っているのかを紹介していこう。
かくして趣味人は醸成される
令和の世になっていきなり注目を集めてしまったピープルであるが、登場から35年も経っている車両を動態で維持するのは大変ではないのだろうか?
以前の記事で登場いただいた門前秋良さんによれば、「部品は何も出ないので、維持するには工夫と気合いと根性が必要」とのこと。
ここで門前さんの車両遍歴について、軽く触れてみることにしよう。
門前さんが初めて所有したバイクは、キャブ仕様のホンダ・プレスカブ。「バイクを買おうとしたら、たまたま出てきたのがこのバイクだった」というが、プレスカブは新聞配達などの業務で使用されることが多く、大抵は乗りつぶされてしまうことがほとんど。そのため、中古車として市場に流通することは少ない。ましてやそれを、趣味のバイクとして乗っている人はそう多くはないのではないだろうか。
続いて門前さんが入手したのが、これまた珍しいホンダ・パルディン。「Twitterで『時の止まったバイク屋さん』みたいな画像にパルディンが写っていたんですが、それが妙に気になって。ネットオークションを探してみたところたまたま出品されていて、なんとなく落札してしまったんです」
開いてしまったディープな趣味人のトビラ
このパルディンを入手したことで、門前さんは「妙に濃い人」と知り合うことが多くなっていったという。
ピープルを入手したのも、「三重県にロードパルばかりを集めている趣味人がいて、『今度富山県までピープルを引き取りに行くよ』と連絡を受けていた」ことがきっかけ。
学生のころに、大阪の日本橋付近にある喫茶店前に止まっているのを見て以来ピープルが気になっていたという門前さん。なかなか入手できる車両ではないので居ても立ってもいられず、かの趣味人が引き取ってきたピープルの不動車を思わず購入してしまったのだそうな。
ピープルを維持するのは大変!?
先述のプレスカブやパルディンのほかにも、国内生産時代のホンダ・CG125といった、なかなかレアな車両を所有している門前さん。その経験を生かしてピープルのレストアを行い路上復帰させたそうだが、「もともとバイクの知識があるわけではないので、試行錯誤の繰り返しですよ」と苦笑い。
ピープル自体は構造の簡単な2ストロークエンジン車なので、キャブの掃除とタンクの清掃のみでエンジンは息を吹き返した
が、問題だったのはその車体構造。
「キャブはパルディンなどと同様のPA30だったので、ガスケット類は無理矢理どうにかしたのですが、厄介だったのはエンジンを降ろさないとキャブが外れない構造だった点です。しかもオーバーフローパイプがなかったので、オーバーフローするとすぐにプラグがカブってしまって大変でした。ひどいときは1日に5回もエンジンを積み降ろしする羽目になりました」
それ以外にも純正の20インチタイヤがきちんとしたバイク用タイヤ(!)だったり、自転車用タイヤを流用しようとしたら、表記方法の違い(インチサイズの表記が、バイクタイヤはリム径表記、WO規格の自転車タイヤはタイヤ外径表記などなど……)で適合するのが24インチタイヤだったり、負圧コック廃番でが見つからず代替品を探すのに大騒ぎしたり……と、かなりの苦労をしたそうだ。
その甲斐あって無事に公道復帰したピープルであるが、「最初は数カ月乗って、以前より欲しかったシャリーに乗り替える予定でしたが……。でもここまで『ピープルの人』として認知されちゃうと、そうもいかないですね」と門前さん。しばらくはピープルとの生活は続くようだ。
まだ入手可能だが困難は覚悟するべし
ちなみに現在、中古二輪車販売サイトなどでピープルの中古車が流通しているが、タマ数は1ケタ台とわずか。中には在庫で残っていた新車が30万円台で販売されているという例もあるが、概ね10万円台が相場のようだ。
同様にインターネットオークションでも、出品されている車体はわずか。不動車である場合も多く、路上復帰にはかなりの困難が待ち受けていそうである。
だが、冒頭で門前さんが言うように、工夫と気合いと根性があればどのような車両でも維持できるもの。動画投稿サイトなどではピープルのエンジンをチューニングして走りまわっている人もいるようなので、興味のある方はぜひとも挑戦して頂きたいものである。
report:日暮大輔 写真提供:ホンダ/門前秋良さん