KRの快走と、惑い
そして迎えた’70年代。
一気に大排気量クラスへの進出をはかったカワサキは、500㏄クラスのH1-Rと、750㏄クラスのH2-RのちにKR750を開発。

●じゃじゃ馬マッハをベースとする空冷3気筒エンジンを搭載したH1-Rは、全日本、世界GPなどに参戦。後に水冷のH1-RWへと進化することになる。

●’72年オーストリアGPのグリッドについた安良岡健と、雲形模様のカウルを付けたH1-R。この年は開幕戦の西ドイツGPで9位に入賞している。

●水冷化され外装デザインもレーサー然としてきた’75年モデルのH1-RW。空力的効果を狙ってエンドをツンと上げたシートカウルが特徴的だ。
単発のデイトナ200マイル、マン島T.T.、フォーミュラ750、世界GP500㏄クラス、全日本FL(フォーミュラリブレ)など、さまざまなレースに参戦。
新たに採用したライムグリーンのレーシングカラーは、瞬く間にカワサキのイメージを定着させる効果を強力に発揮した。
ただ、一気にハイパワー化したエンジンと、まだ発展途上の車体まわり、そしてエンジンパワーに性能が追いつかない当時のタイヤなどの問題があり、全体にリタイアや転倒も多く、また選手権よりは単発イベントへの出場も多かったため、レース活動としてはなかなかまとまりを持たせることは出来なかった。
そんな中、デイトナでもレースが行われ、もちろん世界選手権もある250㏄クラスへの参戦を決定。
タンデムツインエンジンを採用したKR250がデビューすることになる。
デビューシーズンとなった’75年のデイトナではトラブル、続いてエントリーを開始した世界GPでもまだ思うような結果を残すことは出来なかった。
’76年も根本的な問題解決には至らず、悶々とした日々が続くが、2気筒を同時爆発にしたところ様々な問題が解消。
それが’77年のミック・グラントによるGP初優勝へとつながっていく。
KRの快進撃が始まるのは’78年からだった。
K.バリントン、G.ハンスフォード、A.マンクというゴールデントリオが、KR250と350のふたクラスでまさに飛ぶ鳥を落とす勢いのレースを展開。
’78年から’82年まで5年間の250と350、通算10回のチャンピオンシップ中、8回を獲得するという快挙を成し遂げた。

●’78年から怒濤の快進撃を始めるKR250。初期型は、まだ小さなシートカウル、前後一体のシリンダー、180度クランクなどを搭載している。
しかし、この好成績が、カワサキを惑わせてしまったのも確かだ。
’80年に、KR500で最高峰クラスに参戦を開始。
随所に革新的なメカニズムを盛り込みながら、実戦的な戦闘力を身につけられないまま3シーズンを消化し、ランキングは12位、8位、9位という中途半端なものしか残すことが出来なかった。

●Mr.ライムグリーンとして多くの人気を集めたK.バリントン。250/350の余勢を駆って参戦した500だったが、思うように事は運ばなかった。
’83年にはいっさいのグランプリ活動から撤退することになり、’80年代におけるライムグリーンの活躍は耐久などのレースに限られている。

●’70年にスタートしたライムグリーンのカワサキレーシング活動にピリオドを打つことになったKR500。最高順位は、’81年の3位が2回だった。
結局、カワサキの世界選手権ロードレースにおける通算タイトル獲得数は、’69年の125が1回、そしてKR250/350で8回を加算し、計9回となっている。
★『浅間から世界GPへの道』 現在発売中!!★
浅間レースから現代に続く日本レース史を扱っている『浅間から世界GPへの道-昭和二輪レース史1950〜1980』、現在好評発売中です!
1950年代当時、国内には舗装路のレースなど無く、ダートでのレースしか知らなかった日本のバイクメーカー。舗装路を走るノウハウなど全く無かった日本メーカーがどのようにして国外のレースに挑んだのか、男たちは何を胸に抱きバイクを走らせたのかが分かる貴重な一冊となっております。現代では世界トップクラスの実力を誇る日本のバイクメーカー、FIM世界耐久選手権など多くのレースが行われる鈴鹿サーキットがもたらした新しいモーターサイクルの歴史、戦後国産メーカー工場レーサー系譜図鑑など、これさえあれば日本の二輪レース史が丸分かりできるボリュームとなっております。
また、サーキットとしての公式レースの幕が下りることとなった、幻の’59浅間火山レースのカラー映像、それから’59第1回全日本モトクロス信太山大会も収録されています!
ぜひお手にとって、先人たちの熱い思いを感じてください!
あわせて読みたいオススメ記事はこちら!
【遙かなるグランプリへ5】ヤマハの先見性、ここに極まり(前編)
【時代を駆け抜けたバイクたち3】KAWASAKI 900 SUPER FOUR(Z1)&Ninjaシリーズ
2