ヒストリー

【遙かなるグランプリへ6】世界は知っていた…スクランブルレースから始まるヤマハ・GP史(後編)

前編はこちら

 

我が道、揺るがず

1961(昭和36)年にワークスによるグランプリ挑戦を開始したヤマハは、ホンダやスズキとは明確に異なるスタンスでマシン開発を進めた。
先行する2社が毎年必ず、時にはひとシーズンに複数の新型マシンを投入したのに対し、ヤマハはかたくなにマイペースを貫いた。
初年度を戦ったRD48こそ1シーズンのみだったが、それ以外のモデルは執拗に複数年にわたって使用し熟成され続けた。
ヤマハに初めてのタイトルをもたらした250㏄クラスのRD56に至っては、実に4シーズン29レースもの実戦を戦い抜いている。

ホンダやスズキのやり方を見慣れた日本からの視点では、やけにのんびりとした、ともすれば怠慢にさえ感じるヤマハのやり方は、しかし世界的にはごく当たり前のペースだった。
それまで海外のどんなワークスチームも、毎年がらりと仕様を変えたマシンを湯水の如く投入するなどということはなかった。
ホンダとスズキが、突出していたのは確かだった。
雑誌は「ヤマハ、今季もRD56を使用。新型の投入なし」と、さもニューマシン攻勢を続けることこそがワークスの使命であるかのように書き立てたりもした。
そんな論調を尻目に、RD56は4年目に見事チャンピオンマシンとなった。

●袋井テストコースでの記念撮影。左から本橋明泰、金谷秀夫、ジャコモ・アゴスチーニ、高井幾次郎、片山敬済。新旧入り交じる最強年度の布陣。

●偉大なレース人生の最終章をヤマハとともに過ごしたアゴスチーニ。全15回のタイトル中、ヤマハに乗って350と500で1回ずつを獲得している。

欧米のレース関係者は、そんなヤマハのやり方を認めていた。
ホンダやスズキのめまぐるしい新型ワークスマシンは存分にファンの目を楽しませていたが、それが決して長続きするものではないことを、レースに精通した人間ほど見抜いていた。
あからさまに気筒数を増やしたり、エンジンブロックのキャスティングを変更する大手術を見せつけることより、ブレーキ性能を徐々に向上させたり、カウルをわずかに絞って空力を整えることの方が、欧米のレース関係者には実質的に映った。
それと同時に、地道に市販を続けるTD-1を堅実に改良し続けていることも、ヤマハへの信頼をあつくする材料だった。

●’60年代における8年間のワークス活動、そして同じカラーリングのTD/TR/TZなどによって、ヤマハレーシングのイメージは確実に定着した。

そんなヤマハを、烈火の如く燃え上がらせたのが’64年にデビューしたホンダ6気筒3RC164だった。
超高速コースで知られるイタリア・モンツァでその圧倒的なトップスピードを見せつけられたヤマハは、ついに2気筒RD56に見切りをつけニューマシンRD05=V型4気筒の開発に着手した。
しかし、翌’65年はホンダ6気筒RC165の調子が安定せず、さらにはその超絶した性能をレッドマンが御しきれなかったこともあり、旧型RD56のヤマハがタイトルを獲得するのだった。

そして迎えた’66年シーズン、ホンダは6気筒を天才ヘイルウッドに託し、ヤマハは4気筒RD05を実戦配備。
だが、この年のヘイルウッドの走りは後に「グランプリ史上最高」と言われるほど壮絶で、欠場した2戦を除いてパーフェクトスコア。
翌’67年にRD05は05Aへと進化するも、僅差でヘイルウッドの連覇を食い止めることは出来なかった。

●’67年の最終戦FISCOを快走するアイビー。’60年代最後に開催された日本グランプリの125㏄クラスで有終の美を飾ったのがアイビーだった。

●ホンダ6気筒を振り切った’67年東ドイツ・ザクセンリンクのリード+RD05A。コースによってはRD05Aが完璧に主役を演じることもあった。

 

→次ページ:市販レーサーはヤマハの時代だった

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