平成はアドベンチャーの時代だ。
BMWとホンダが生んだアフリカ生まれの2台が人気を博し、さらにその間に新興勢力のKTMが割って入ると、巨大、豪華、高性能というアドベンチャーの時代が本格化した。

●(左)1989 NXR750、(右)Africa twin(XRV750)
report●廣瀬達也
その性能、怪物につき
突如として台頭してきたかのようなアドベンチャークラスだがその歴史は古く、遡ればデュアル(マルチ)パーパスなどと言われたのが始まりだろう。
「凸凹道を走れるのなら平坦なオンロードも問題ないだろう」といった程度のネーミングだ。
しかし、速さを求めるのも世の常。手っ取り早い方法はエンジンのキャパシティを大きくすることだ。
そこから生まれたのがビッグオフと呼ばれる排気量の大きなダートモデルであり、時をほぼ同じくして世の中を席巻(せっけん)したのがラリーレイドブームである。
サバイバル的要素をふんだんに盛り込んだクロスカントリーレイドは、例えばヨーロッパのアルプスを越えてアフリカ大陸を長旅するライダーたちの注目を集めることとなる。
ラリーで強いタフなマシンは、そんな長旅でも使いやすいはずだという図式である。
平成の時代になって次々と現れたのがラリーレイドのレプリカマシンたち。
ホンダなら新旧アフリカツイン、BMWなら800ccから現在は1200ccとなっているGSシリーズ、そして2018年にダカールラリー17連覇を手にしたKTMの、スーパーアドベンチャーシリーズ。
たっぷりの荷物とともに長く過酷な旅をより快適に楽しみたいと夢見る旅人たちにとって、他のカテゴリーのバイクにはない、頼もしい素質と装備にあふれているマシンだ。
Honda
パリダカ4連覇のポテンシャルと伝統

●Africa twin (CRF1000L)
"パリダカ"のウィナーであるNXRは比較的重心が高く、ヒラヒラと舞うような感覚でオフロードを走り抜けるという、それまでのビッグオフロードには少なかった快感を抱かせた。
その心地よさを継承したのがアフリカツイン。
24ℓの燃料タンクが空になる500km前後まで淡々と走り続けられる快適性を披露した。
V型から1000ccパラツインエンジンとなったCRF1000Lアフリカツインはより操る楽しさを重視し、走りを楽しめるのが魅力である。
BMW
元祖超弩級ツアラーもパリダカ生まれだ

●R80 G/S

●R1100GS

●R1200GS
R-GSの巨体には圧倒されるが、走り出してみれば意外にもスムーズに乗れていることのほうにむしろ驚かされる。
低重心のボクサーエンジンはダートでも比類なき安定感を発揮し、ワインディングではまさに地をはうような接地感を披露するからだ。
さらなる性能を求めた1150、大改革が施された1200へと進化を続け、過酷なコンペティションで培われた、道を問わず長距離・長時間を心ゆくまで楽しませてくれるという"ビッグオフロード”の真髄を追求するタフガイだ。
KTM
21世紀にパリダカ17連勝の勢いに乗る

●1290 SuperadventureR
舞台を南米に移したダカールラリーで快進撃を続けるKTM。
そのファクトリーマシンの血を受け継ぐのが1290スーパーアドベンチャーだ。
スロットルを開ければフロント周りの荷重が消えてしまったかのような勢いで前進する力を発揮し、加えてそれをキッカケに体重移動すればマシンはスッと方向を変えるために倒れこむ……そんな"面白い”と表現するしかないダイレクトな反応を楽しむには最高の、スパルタンなマシンだ
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