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【CB400Four vs CBX400F】歴史に名を残す「2台のホンダ400フォア」比較試乗1982

CBX400F ヨンフォア CB400フォア

特集「THE Honda CB」

──「CB」はレースで勝つために造られたマシンだ。ホンダのマシンにCB=CLUBの2文字が用いられたのは、1958年に発表されたBENLY SUPER SPORTCB90だが、その翌年発表されたCB92はデビューレースの「第3回浅間火山レース」で、出場したクラブマン125ccレースと、耐久ウルトラライト(125cc)クラスの2クラスを制覇し、さい先のよいスタートを切った。以来「CB」は、ホンダスポーツの代名詞になり幾多の名車を生んだ。──

こうした序文で始まるのは八重洲出版『別冊MOTOR CYCLIST』1982年2月号の巻頭特集「THE Honda CB」である。当時の編集長、福島新介氏を筆頭に編集部総出で筑波サーキットへ繰り出し、ベンリィCB92スーパースポーツ、ドリームCB72、ドリームCB450、ドリームCB750Four、スーパーホークIII、ドリームCB400Four、CBX400F、CB750F、CBX(1000)の9台を試乗。そのヒストリーやメカニズム解説、オーナーの言葉などを交え、多角的かつエモーショナルに「CB」を紹介する特集であった。
以下に掲載するのはそのなかの一企画「比較試乗 CB400Four VS CBX400F」だ。ホンダの400cc4気筒としては第1世代のヨンフォアと、次の世代であるCBX400Fを筑波サーキットにおいて乗り比べたものだ。
ライダーは編集部員(当時)の永山育生氏と佐藤康郎氏の2名である。

筑波サーキットを走る2台。CBX400F+永山育生(左)、CB400Four+佐藤康郎

80年代は革新メカの年か

ともにスーパースポーツとしての走りを追求しながらも、この2台がライダーに与える印象はかなり異なったものだ。豪華さの中にスーパースポーツとしての美しさを求めるCBX400Fに対し、バイクは何も付いていないのが美しいといわんばかりに、サイドカバーさえ必要最小限のサイズにとどめたCB400Four。どちらが美しいかではなく、ホンダが時代に与えた回答がこれだったということだろう。

「CBのシンプルなスタイルは最高にいい。今見ると逆に新鮮だ」(永山)
いつの時代にも求める対象をひたすら追ったものは、時が経っても美しいはずだ。その点CBは文句なく合格だし、CBXも将来きっとそう評価されるだろう。エンジンはOHC4気筒とここまでは同じだが、CBはSOHC 2バルブであり、CBXは2本のカムシャフトを持つDOHC、しかも吸排気各2本ずつの4バルブ4気筒だから16本もある。バルブの駆動方式は両車ともロッカーアームを使う点で等しいものの、カムシャフトとバルブの位置関係はまったく異なり、高回転時の優位性はCBXのものだ。
出力も当然CBXの48ps/11,000rpmが圧倒的に、CBの36ps/8,500rpm(408cc型は37ps)を引き離すが、当時(1974年)最速といわれた2サイクルのカワサキ KH400やヤマハ RD400でも38psだったことを考えると、4サイクルとしてはよく健闘していたといえるし、CBXの48psは当時なら500ccクラスの出力といえる。

サスペンションも大きく異なるところだ。まだロードスポーツにサスペンション革命の波が押し寄せていなかった1974年のCBには、プログレッシブレートを実現したプロリンクも、ノーズダイブを抑える「TRAC」の影もカタチもない。
ブレーキこそフロントにディスクを装備するものの、CBXの革新的な「インボードブレーキ」のメカニカルな輝きはなく、リヤブレーキもドラムにとどまっている。
もちろん、プロリンク、アンチノーズダイブシステム、インボードブレーキを最上のものだと決めつけるわけではないが、このあたりに、持てる技術のすべてを投入して第2世代の400cc4気筒にかけるホンダの意気込みが明確に表現されている。

CBとCBX、2台のスーパースポーツを見るとき、周辺技術を含めた70年代と80年代のバイクのありかた=設計思想の違いを発見できるはずだ。

CBX400F「頼もしいプラス12ps」

ホンダ ドリームCB400Four

一般道で順法精神を発揮して、せいぜい60〜70km/hまでで走っていれば、とても両車に12psもの差があることを実感できず、むしろ同等のパワーを持つかのような気持ちにさせられる。CBが比較的厚い低中速トルクを持つのに対し、CBXは48psを絞り出すために、低速を幾分犠牲にしているためだ。
「走り出してしまえばCBXは誰にでも扱いやすいエンジンだが、スタートだけは2,000〜3,000rpmに回転を上げてクラッチをつながないともたつく、極低速をもう少し力強くして欲しい」(永山)

CBXがトップギアで生き生き走るようになるのは、65〜70km/h以上(約4,000rpm)であり、これ以下ではほかの400cc4気筒にやや遅れる。それでも各ギアで4,000rpmまで加速すれば、同回転までで走るCBをやや引き離すことが可能だ。高回転に目を転じれば、そこはCBXの独壇場といえる。7,000rpmから鋭く吹け上がり、なんのためらいもなく11,500rpmのレッドゾーンを飛び超え12,000rpmまで立ち上がる。この素晴らしい高速の伸びは、400マルチ中、文句なしにトップに位置するものだ。

CBとて軽々と10,000rpmまで回るエンジンを、CBXと同じ6段ミッション(CBXのほうがクロスしている)で使い切れば、並みの4輪車など足元にも及ばない加速をするが、CBXはそこからさらにプラス1,500rpmの実用回転域を持っているのだ。ここにいたって、12psの差を実感として受けとめないわけにはいかなくなる。ゼロヨン、最高速を取り上げても、CBの14秒台・160km/hをややオーバーに対し、CBXは13秒34・183km/hという圧倒的な実力差がある。これは現行400マルチ中最速のものだ。
ギアチェンジの確実さとクラッチの軽さは特筆すべきものだ。特に後者は作動もよく最上のできといえる。CBXから他車に乗りかえると、それが今まで軽いと信じていたものでさえ重く感じるほどで、女性ライダーにも苦にならないことを保証しよう。

さすがに最後発の4気筒だけあって、CBXのエンジンに文句をいうべきところではないが、個人的に気になったのはアイドリングに微妙な調整を必要としたことと(試乗車にはすぐにエンストする傾向があった)、永山の指摘した極低速のなさか。

ホンダ CBX400F

進境著しいブレーキ

CBXで最も注目すべき装備は、インボードタイプのブレーキとプロリンクリヤサスペンションだろう。
このブレーキで好ましいのは、レバーを引いた瞬間の効きのよさだ。絶対的な制動力は同時に試乗したスーパーホークIIIのツインポッドダブルディスクタイプと大差ないが、シングルでこれだけの効きを得られるのはうれしい。リヤも同様のインボードだが、こちらも強力だ。前後のバランスでいえばややリヤが勝っている印象もある。

CBXのブレーキと比較すると、CBは非力といわざるを得ない。初期の効き、過渡特性、絶対的制動力、レバーの軽さ、その全部の点でCBXに劣るのだ。ブレーキに関しては、いかにこの7年間にバイクが進歩したかを証明できた。だからといって、CBのブレーキが実用に耐えないというのではない。公道上でもサーキットでもそれなりの効きを示し、十分に止まることができる。再び繰り返すなら、36ps対48psのエンジンと同じことで、36psでも走れるが、もう12psあれば、もっと速く走れるということだ。

CBXのフロントフォークに取り付けられたアンチノーズダイブシステム(TRAC)は、実に有効だ。4段階に調整が可能で、1にセットすればごく自然なノーズダイブ感を失うことなく、それでいてTRACなしと比較すれば、ちゃんとノーズダイブを押さえているというさりげなさであり、4にすれば、これぞアンチノーズダイブという効き方をする。ライダーの好みと使用条件によって、効き方を選べるわけだ。
「怠慢なブレーキングをしても、CBXはノーズダイブが少ないので上手になった気さえするほどだ」(永山)
プロリンクは、荒れた路面での乗り心地のよさを最大の美点としているが、実力の高さをそれだけで知ることはできない。
「低荷重ではソフトに、サーキットなどではハードにと、ひとつのセッティングのままですべての走りをカバーできるのがプロリンクのよさで、ストロークをふんだんに使い切れるサスだ」(永山)

よりハードなCBX400F

ホンダ CBX400F

ともにユーロスタイルといえる2台のポジションは微妙に異なる。CBのライディングポジションは、バックステップとストレートに近いハンドルが生むスポーティーなもので、足着き性のよさもあり、むしろ現代の250ccクラスに近く、ライダーに取りまわしの容易さを印象づけてくれる。
一方CBXも小柄なことでは、400cc4気筒中1番といってよい。低く形状のよいシートによる足着き性は、むしろCBを上回るほどであり、幅の狭いハンドルと高目のバックステップが作り出すポジションは、CB同様やや前傾気味だが自然なものだ。

両車のポジションはともに具合のいいもので、市街地のちょい乗りからロングツーリングまで使用目的を選ばないし、もちろん峠道を攻めるといった本来の目的にもよく合っている。強いて言えば、ややハンドルの高い(400cc4気筒中最も低いが)CBXがスポーティーな味を殺すことなく、長距離走行でも上半身の疲れを最小にしている点が進歩といえよう。CBにやや時代を感じるのは、ステップが低目なことで、これは峠道やサーキットを攻める時、バンク角の浅さとなって表われる。
「だが、足を着く機会の多い市街地ではむしろ利点になるし、ひざの角度の緩いのはロングツーリングでは楽だ」(永山)
という意見もあり、一概にどちらが優れているとは決めかねるところだ。高さは別にして、CBXのステップはもっと内側につまると、さらにポジションは決まるはずだ。上半身がカチッとしているだけに、これはやや残念といえる。筑波サーキットでのCBXは実によく走った。深いバンク角とシャープなエンジンは、こんな場所でこそ本領を発揮する。軽いハンドリングは思いのままにラインを選べ、コーナリング速度も速い。

「今までのバイクはステアリングヘッドもハンドルも高く、倒し込んでいくタイプだったが、CBXはスパッと決まる切れのよさを感じた。頭から突っ込むタイプのバイクだ。エンジンもいいが、サスは完全にそれを上回っているから、速さを体感しにくい」(永山)


レールに乗った安定感と表現すべき性質の走りではないが、エンジン位置とステアリングヘッドを低くするという低重心設計は正解といえる。ツーリングや街乗りも悪くないが、サーキットのような目一杯走れる場所でこそ、CBXは実力を堪能できる種類のバイクだ。
発売当初はサーキットで速いと評価されたCBも2代目の前では、いささか色を失うといったところか。同時にスタートすれば、加速で、コーナーで、あっという間にCBXに追いていかれてしまう。そうでなくては、ホンダがこれほど力を入れて、400マルチを開発した甲斐がないというものだ。

48万5,000円の価格は確かに安くないが、400ccの枠内で最速のバイクを欲する4サイクル派のスピードマニアには、無視できない1台だ。
「当時高校生だったぼくらには、CB400Fourは憧れのマシンだった。街中をCBが走っていると振り返って、後ろ姿をしばらく追ったものだ」(永山)
そんな若者の熱い視線を浴びる仕事こそ、今後のCBX400Fに課せられた使命なのかもしれない。
(まとめ●佐藤康郎)


■1974年12月に発表されたホンダ ドリームCB400Four。1976年3月に408cc→398ccへと排気量を変更し、CB400Four-I/IIへとモデルチェンジされた。1977年5月に後継機種ホークIIが登場し、その役目を終えている。

■1981年10月の第24回東京モーターショーにおいて初公開され、その興奮も冷めやらぬ1981年11月17日に発売されたCBX400F。1982年12月にVF400F、1983年12月にCBR400Fが登場し、プロダクトライフの終焉を迎えるが、市場の声に応え1984年にカラーリングほか細部が変更されたモデルが再生産された。

ホンダ ドリームCB400Four/CBX400F諸元比較( )内がCBX400F

■エンジン 空冷4サイクルOHC(DOHC)並列4気筒2(4)バルブ ボア・ストローク51.0(55.0)×50.0(42.0)mm 排気量408(399)cc 圧縮比9.4(9.8)最高出力37(48)ps/8,500(11,000)rpm 最大トルク3.2(3.4)kg-m/7,500(9,000)rpm
■変速機6段 変速比1速 2.733(2.769) 2速1.800(1.850) 3速1.375(1.478) 4速1.111(1.240) 5速0.965(1.074)6速0.866(0.931)1次減速比3.423(2.565)2次減速比2.235(3,000)
■寸法・重量 全長2.050(2.060) 全幅0.705(0.720) 全高1.040(1.080) 軸距1.355(1,380)(各m) 車重183(173)kg 燃料タンク容量14(17)L オイル容量3.5(3.0)L タイヤサイズ前3.00-S18(3.60-H18)後3.50-S18(4.10-H18=ともにチューブレス) キャスター26°30′(26°00’) トレール85(97)mm
■価格 32万7,000円(48万5,000円)

*数値はすべて発表当時のもの

原文●佐藤康郎/永山育生 写真●本間俊夫/茂垣克巳 編集●飯田康博
*当記事は『別冊MOTORCYCLIST』1982年2月号の記事を再編集したものです。


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