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「スーパースポーツVT250FからフレンドリーなVTRへ」20年振りに乗って考えた、ホンダVT系の変わりゆく位置づけ

VTZ250やゼルビス、VTRという汎用性の高いモデルへ転身

しかしながら、VT系90度Vツインエンジンが消滅したわけではない。
ノンカウル版のVTZ250、後に登場するゼルビスなどがバイク便ライダーに使われ、頻繁に見かけるようになる。
実際話を聞いたバイク便ライダーは、「エンジンが丈夫で壊れない」と口を揃えて言う。「10万kmはもちろん、20万km走ったマシンもザラにいる」のだそうだ。
油脂類など定期的に替えるものさえきちんとしていれば、調子も落ちにくく、セッティングも神経質でない。しかも、そもそもが高回転に対応するエンジンだから、過回転トラブルも少ない。高回転、高出力を狙った水冷V型エンジンは、耐久性でも大きく貢献していたのである。

VTZ250
1987年に登場したVTZ250。当時の新車価格は39万9000円。
ゼルビス
1991年登場のゼルビス。当時の新車価格は48万9000円。

「VT250F」の車名は80年代後半に消滅したものの、VT系エンジンがその後も生き残ったのは、90年代半ばにクルーザーのVツインマグナに搭載されてスマッシュヒットを飛ばしたことも証明するように、とにかく汎用性・実用性とも高いエンジンだったからだ。
Vツインマグナを機にミッションは5速化され、中低速域重視の特性へ大きく変更されたが、その後、VT系エンジンは気軽で汎用性の高い250スポーツとしてVTRへ継承された。

思い出すのは2006年の夏。
別冊モーターサイクリスト編集部員となっていた私が、ちょうど20年前の大学生の夏に出かけた「下道鈴鹿8耐観戦道中」を再現(!?)するツーリングレポート取材の相棒に、VTRを借り出して長距離を走ったこと。
実用トルク重視へ調教されたエンジンは下道走りではほどほど機敏なのに素直。そして適度な鼓動というかパルス感がある。モーターのように感じた初代VT250Fのエンジンより、テイスティに思えた。これは時代の流れか、それともエンジンの進化にVT系ツインが程よく飲み込まれたせいか。

2006年『別冊モーターサイクリスト』の取材で筆者が使用したVTR(キャブレターモデル)。大学生の時と同じように、国道1号線、国道23号線をたどり鈴鹿サーキットまで走った。
筆者がVT250Fで人生初転倒した場所(国道1号の箱根界隈)を、再びVT系のバイクで走るというなんとも言えない感慨。当時、買って3ヵ月も経たないVT250Fはココでビキニカウルに盛大な擦過傷を負った……。
2006年の鈴鹿8耐は、#778辻村 猛&伊藤真一が組む「F.C.C.TSR ZIP-FM Racing Team」ホンダCBR1000RRが周回数214で優勝を飾った。

現在、軽二輪クラスのスポーツモデルでは並列2気筒と単気筒が主流となり、250cc4気筒を搭載したカワサキ ニンジャZX-25Rの登場が先ごろ大いに話題となったが……俊敏さよりも味わい、扱いやすさへと調教されたVT系90度Vツインは、ある意味ぜいたくな時代に作り込まれて長く生き残った、真摯なメカニズムの結晶だったと言って過言ではなかろう。
こういう息の長いエンジン、今後出てくるのだろうか──。

VT系エンジンの最後期モデルとなったのはインジェクション仕様のVTR。写真はその最後の最後となった、2016年10月発売の「VTRスペシャルエディション」。燃料タンクにストライプが入るほか、ブラウンのシートとなる。

レポート●阪本一史(元・別冊モーターサイクリスト編集長) 写真●ホンダ/八重洲出版 編集●上野茂岐

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