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ザッパー系を乗り継ぎ計13万km走ったライダーが考える「シリーズ共通の特性とは?」【カワサキ空冷4発の系譜(3)】

Z1を始めとするZ系や、ニンジャGPZ900Rに比べるとやや通好みのイメージがありますが、今も熱心なファンが少なくないZ650から始まった「ザッパー系モデル」。
自身の愛車として2台のザッパー系モデルを計10年以上乗り継ぎ、原点Z650を含む様々なザッパー系モデルに触れてきた筆者が、各車の乗り味の違いや、シリーズに共通する特性について語ります。


若いころは「ザッパー」という名前、そんなに聞かなかったような気もするが

カワサキ・ザッパー系モデルの系譜に続き、実際にザッパー系モデルを乗り継いだライダー目線で各車の印象を紹介していきたい。

筆者は現在50代だが、若い時分には「ザッパー」という呼び名を耳にした記憶はなく、Z650を「ザッパー」、その後継モデルを「ザッパー系」と表すると知るのは後々二輪雑誌の編集部に籍を置いてからだった。
なお、この「ザッパー」という名称、実はカワサキの開発陣にさほど馴染みのない表現だったことも、後々知ることとなる。

1976年に発売されたカワサキZ650(B1)。車体色はレッドとグリーンの2色が設定された。

『別冊モーターサイクリスト2007年3月号』でザッパー及びザッパー系モデルを特集した際、Z650の開発陣──エンジン担当の稲村暁一さん(W1やZ1系も担当)、車体設計担当の下森 衛さん、デザイン担当の栗島忠弘さん(故人)氏にお話をうかがったのだが、開発当時はザッパーの名称よりも開発コードナンバーの「202」や、車名そのもの「Z650」が社内では一般的だったという。

Z650の車両全体透視図。寸法は、全長2170mm、全幅850mm、全高1145mm、ホイールベース1420mmで、Z2よりひとまわりコンパクトな車格。

「ザッパー」はあくまで軽快に走るマシンの総称のように考えられ、稲村さん曰く「ザッパーの原点と言えば、トラ、BSA、ノートンなどの英国製ツインじゃないかと思っていた」とのこと。
だが、その後に二輪雑誌媒体で「ザッパー=Z650」という捉え方が広まっていき、同車が軽快に走るミドルスプリンターとして名実ともに認識されていったのだ。


652cc→738ccになっても、時代を越えて続いたザッパーのフィール

さて、個人的なザッパー系との縁について話を戻す。大型二輪での初の愛車がGPz750(1983年発売)で、2台目がザッパー系の末裔ZR-7(1999年発売)だが、冒頭で記したように、GPz750入手時は同車を「ザッパー系」と意識はしていなかった。
手に入れた理由は単純に高校時代からの憧れで、10年以上落ちの同車を1990年代半ばに中古で購入。GPz750はオイル漏れを含むエンジン各部の修理にけっこう手間と費用を注ぎ、都合6年7万kmほどを一緒に過ごした。

ナナハンではあるが、厳密には排気量738ccとなるGPz750のエンジン。開発陣のエンジン担当稲村さん曰く「ボアを66.5mmにして、排気量を750ccフルスケールに近づけるとか、考えませんでしたね。コンマ5とかキリが悪いでしょ」と語っていた。

そして2台目のZR-7は、そんな過去の思い出とザッパー系の進化に興味があり、2000年以降に中古で購入。ZR-7とは約8年6万kmほどを過ごしたが、驚くほど手間のかからないエンジンだった。
GPz750で経験したセルの空回り症状(ワンウェイクラッチ交換)、クランク周りからのゴロゴロ音とアイドリング不調(最終的に一次駆動チェーン交換とカムチェーンの交換)、シリンダーベース、ヘッドからのオイル漏れ(ガスケット交換)、オイル下がり(バルブステムシール交換)などは皆無。
それもそのはず、ZR-7ではそれら部分のほぼすべてに見直しが入っていたのだ。

筆者が愛車としていたZR-7(もちろんスクリーンは後付けのもの)。エンジンの進化に感心したものの、リヤモノショックの動きはイマイチ安っぽく、むしろGPz750のユニトラックの方がしなやかで洗練されていた。

Z650→ZR-7に至るザッパー系モデル各車の印象

地道な熟成を経てザッパー系エンジンは徐々に“優等生”になっていったが、自身の経験と試乗取材で経験したことを踏まえ、ザッパー系モデルそれぞれに感じた印象を記していきたい。

■Z650=64ps、5.8kgmの性能値は程よく刺激的で、低中速寄りのギヤレシオにより、一般道、ワインディングでのキビキビした走りが魅力。ミクニの強制開閉式キャブレターVM24による低回転からのツキのよさと、少し古めかしいザラつきのある回転感が特徴。フロント19インチの程よい手応えと軽快感のある挙動は、Z1の好悪含めた特徴を見直した秀逸な乗り味だと思う。

■GPz750=738cc化してから4世代目となるエンジンは、72ps、6.3kgmの性能を発揮し、ギヤレシオも高速寄りに。ミクニの負圧式キャブレターBS34での大口径化、バルブタイミング見直しで、高回転域の盛り上がりも一段と刺激的だった。

■ゼファー750=68ps、5.5kgmと、エンジン的には先代にあたるGPz750と比べ控えめな性能。キャブレターはケーヒンの負圧式「CVK32」となっており、洗練された乗りやすい特性に加え、低中回転域では滑らかな回転フィールが実感できる。

(ただし1999年以前のモデルはGPz750世代と同様のクセ・弱点も持っていたが、ZR-7登場に合わせて行われたエンジンの改良でそれらも改善)

■ZR-7/ZR-7S=1999年登場時は73ps、6.3kgmと、GPz750と同等のスペックを与えられたもののマイルドな印象。2003年からは環境規制への対応などで67ps、5.8kgmにダウン。

Z650(左)とゼファー750(右)
GPz750(左)と750ターボ(右)

性能値をはじめ、微妙な特性の違いを見せるザッパー系エンジンだが、根本の共通性がある。
それはさほど太くない低中回転でのトルク感で、ナナハンとしてはフルスケールでない738ccという排気量に起因するかと思ったものの……736ccのCB750Fourのほうが太さを感じたので、ボア・ストローク(CBはロングストローク型)比やバルブタイミングなど諸々が関係するのではないかと推測する。

一方で、ザッパー系エンジンの真骨頂と言えるのが、中回転以降での爽快な回転上昇とパワー感だ。4000rpm以上からフワッと盛り上がっていくパワー感が実に気持ちいい。これはZ1系ともCB750Four系とも異なる部分で、ザッパーが軽快な回転感を狙ったことを実感できる。
特にピーク性能を狙ったGPz系は顕著で(現代の水冷直4エンジンと比べるべくもないが)、この基本特性とターボの相乗効果で750ターボが同時代のターボ車より一歩抜きん出た過給機の刺激を味わせたのもうなずける。

最後に、改めて今ザッパー系モデルを手に入れたならと考えてみる。Z650の19インチの車体にZR-7用エンジンを搭載、吸排気系をファインチューンして……などと頭に思い描いて実現できるのかと調べてみたら、マニアはとっくにZR-7のエンジンに着目していた模様。
各世代のザッパー系フリークは、最後期のザッパーエンジンから、エンジン丸ごとないし内部パーツを移植して、ザッパー系モデルを今も熱心に楽しんでいるのだ。

レポート●阪本一史(別冊モーターサイクリスト元編集長) 写真●小見哲彦/澤田和久/八重洲出版 編集●モーサイ編集部・上野

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