ドゥカティLツインシリーズの原点
来るべき大排気量化時代を迎えるに当たって、’60年代後半のドゥカティが最初に検討したエンジンは、並列2気筒とL型4気筒だった。とはいえ、紆余曲折を経て同社が最終的に選択したのは、既存の単気筒の設計を巧みに転用したLツイン。第1号車の750GTが登場したのは’71年で、以後のドゥカティはこのモデルに数々の改良を加えながら、スポーツバイクメーカーとしての地位を確立していくこととなった。
昨今では徐々にそのイメージが薄れているかもしれないが、ドゥカティLツインと言ったら、だれもが頭に思い浮かべるのは、SS:スーパースポーツ/スーパーバイクシリーズの姿だろう。とはいえ、同社が’71年に発売したLツインの第1号車は、アップハンドルや前身したステップ、ダブルシートを装備する750GTだった。もっとも、最初にツアラーを発売して、次にそのスポーツ仕様を追加し、モデルによっては第3弾としてプロダクションレーサーを開発するのは、’50〜60年代から続くイタリア車の伝統的な手法で、ドゥカティもその流儀に従って、’73年には750スポルト、’74年からは750SSを発売している。
初期の750エンジンの特徴は、全体的に丸みを帯びたデザインを採用していることで、’75年以降のスクエアケース(角張ったデザインは、4輪界で名を馳せたジョルジェット・ジウジアーロのアイデア)に対して、’71〜74年型はラウンドケースと呼ぶのが一般的。なお近年では同社の代名詞となっている動弁系のデスモドロミック機構が、Lツインシリーズに採用されたのは’74年の750SSからで、750GTと同スポルトはコイル式バルブスプリングを採用している。
▲ベベルギヤ+バーチカルシャフトでカムを駆動するLツインは、既存の単気筒エンジンをベースにして開発。理論上の1次振動が0にできることと、車体構成部品の一部として使うことを考慮した結果、シリンダー挟み角は90度となった。
▲キャブレターはデロルトPHF。’73年型の本来の口径は30㎜だが、このモデルは32㎜を選択。なお初期の750GTのキャブレターは、イギリス製のアマルMkⅠだった。
▲純正のコンソールに違和感なく収まっているものの、撮影車のスピードメーターとタコメーターはベリアのマグネット式からスミスのクロノメトリック式に変更されている。
▲ベベルLツインシリーズでドラム式のリヤブレーキを採用しているのは、750GTとスポルトのみ。内径は200㎜。
▲側面にDUCATIのロゴが入った38㎜径フォークはリーディングアクスル式で(後年にはセンターアクスル仕様も販売された)、製造はマルゾッキが担当。シングルディスクのブレーキは年式や仕向け地によってキャリパーが異なり、ロッキード、スカラブ、ブレンボの3種が存在する。撮影車のキャリパーは、現在でも新品が購入できるロッキードCP2696。F:19/R:18インチのH型アルミリムはボラーニ。
▲スイングアームピボットより前方に設置されたラバー付きのステップは、ツーリングにおける快適性を重視するGTシリーズならでは。なお当初は逆シフト&右チェンジ/左ブレーキだったベベルLツインが、一般的な正シフト&左チェンジ/右ブレーキとなったのは’75年型から。
新車情報はドゥカティジャパン公式サイトへ