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ホンダ第二世代モンキー【Z50A/Z50Z】(1969~1973)詳細解説「フロント分離機構型も登場!」

■リヤリジッド型のモンキーの最終型となるZ50Z K1(1971年〜)のカタログ

遊園地のバイク遊具に端を発し、前後リジッドサス+5インチの車輪というミニマムなサイズで1967年に登場したモンキーだが、第2世代からは、小さいながらもキチンと走れることが目指された。かくしてZ50Aは、ニューモンキーを謳って1969年に登場した。

モンキーZ50A(1969)走破性向上をねらった、前後輪8インチ+テレスコピックフォーク採用モデル

ホンダ モンキーZ50A(1969年発売)

遊具用のバイク「Z100」の原型を残しつつ、公道モデルとしてデビューした初代モンキーZ50M(1967年発売)。そのかわいらしい小ささとクルマのトランクへの収納性が重視されたZ50Mに対し、1969年7月に「ニューモンキー」を謳って登場したZ50Aに盛り込まれたのは、公道走行車としての走破性、安定性の向上だった。

大きな変更は2点で、前後輪を8インチに大径化し、フロントはストローク可能なテレスコピックフォークを採用したこと。この変更によって当時のホンダニュースリリースでは「……すぐれた走行安定性など、安全で、スポーティな超ミニバイクです」と紹介されている。

ハンドルやステップの折りたたみ機構は継続されたものの、シートの倒し込み機構は省略され、折りたたみ時のサイズは大きめとなった。その結果、クルマのトランクへの収納性は落ちたものの「玄関先などのスペースにおいても邪魔にならない」といった宣伝文句も追加された。
また郊外での短距離移動を重視していた先代モデルに対し、Z50Aでは「街中での買い物、会社・工場構内などでの業務用連絡などにも使える」と、汎用性の高さもアピールしていた。

なおZ50Aは、その特徴からマニアの間で「両手ブレーキ」の通称がある。従来右足操作だった後輪ブレーキを、左レバー操作に移設したことに由来するが、右レバー操作の前ブレーキと合わせて「両手ブレーキ」というわけだ。
ほかに重要な変更点が、バッテリーの搭載とウインカーの標準装備だ(先代Z50Mはバッテリーレス)。これにより、エンジン停止時でもウインカー、ホーン、灯火類が消えなくなるなど、安全性が向上した。エンジンは、吸排気系の改良により0.1psアップとなったほかは、自動遠心クラッチの3速を踏襲している。
全長で75mm長く、車重で7.5kg増となり、小さくてかわいい印象は若干薄まったものの、公道での使い勝手の向上が無視できない要素だったことがわかる。

■Z50Aは3.50-8インチホイール装着、フロントサスペンションにテレスコピックフォークを新採用したのがトピック。これにより、Z50M以上の公道での安定性、走破性向上をねらった。バッテリー搭載とウインカー装備により、保安部品での安全性確保が図られた点も重要なポイント。なお、非可倒式となったシートは、代わりにボルト固定位置での高低2段階の高さ調整を装備。

■固定用ダイヤルを解除してハンドルを下側に向け、車体をコンパクトにする構造は先代のZ50Mから踏襲したものだが、このハンドル折りたたみ機構は、2017年の最終型50ccまで連綿と採用され続けたモンキーのアイコンとも言える部分。

■ダウンマフラーとなった排気系と、吸気系変更などにより、最高出力は0.1psアップしたが、自動遠心クラッチでの3段変速は従来と同様。クルマのトランクなどへの格納を想定し、キャブレター内の燃料を簡単に抜ける燃料排出コック、ガソリンタンクキャップの漏れ防止レバーは先代から踏襲。

■「オフザロードなどの走行時に両足が自由に使えるので、急な下り坂も安心です」とアピールする「両手ブレーキ」の装備。これがそのままZ50Aの通称ともなっているが、次に登場するZ50Zでは足ブレーキに戻る。

■後輪は依然リジッドながら、前輪とともに大径化で8インチに。以降のモンキーも8インチを踏襲する。なおM型で箱型マフラーが配置されたシート下部が新装備の6Vバッテリー収納部となる。

収納性向上をねらい、前輪分離機構を新採用したZ50Z(1970年発売)

ホンダ モンキーZ50Z(1970年発売)

また、翌1970年4月にマイナーチェンジ版が登場。Z50Aではクルマのトランクに積む際の収納性が低下したため、フロント部(フォーク+前輪+ハンドル)がボディ部と完全に分離できる機構を装備したZ50Zが追加されたのだ。これにより同車のニュースリリースでは「乗用車に楽に積めます」と車載収納性を強くアピール。またフロント部分離機構採用と同時に、作業時の安定性に利するメインスタンドを採用したのも特徴だ。

Z50Aからの、ホイール大径化とテレスコピックフォーク採用で「乗用車の行けない砂浜や山坂なども平気で走り、登り、レジャー範囲がぐんと広がります」とアピールできたのは、ある意味でモンキーの進化だった。一方で、小さくたためることでの、積みやすい車格は若干損なわれた。そこでマイナーチェンジかつ追加版となったZ50Zから、同時期発売のダックスホンダと基本を共通化した分離機構採用で、トランク収納が積極的に行えるようになったわけだ。

ちなみにこの時期はZ50Aも併売されており、ホンダの当時のニュースリリースではZ50A=フロント固定式、Z50Z=ニューモンキー分離型と紹介している。なお、Z50Zでは、ほかにアップタイプマフラーへの変更、リヤのフットブレーキ化などが行われたが、これは収納時の持ち上げ性、フロント部の簡易な分離などに配慮した変更と言えるだろう。

ホンダ モンキーZ50Z(1970年発売)。Z50Aのマイナーチェンジ追加版と位置づけられる

Z50Zフロント部の分離機構。先にダックスホンダで採用された機構で、分離手順は次の通り。

1.クリップで接続しているスロットルワイヤーの取り外し。
2.ワンタッチで外れる配線ソケット類の分離。
3.ステアリングヘッド上のノブの左回しでのシャフトの抜き出し。

当時の『モーターサイクリスト誌』では、作業は20秒で完了と書かれている。
分離後も車体を自立させ作業ができるように、センタースタンドを装備。また、リヤブレーキをロッドによるフット式に戻したのは、分離作業を簡単にできるほか、手動ブレーキ系を途中で切ることは、安全性に難があると考えたためだ。

細部を変更したリヤリジッドサスの最終版Z50Z K1(1971年発売)

ホンダ モンキーZ50Z K1(1972年発売)。リヤリジッドタイプモンキーの最終型となった

1969年から続いたモンキーは、フロントサスペンションがストロークする一方、リヤは依然としてリジットサスだったことから、リヤリジッド型とも分類されるが、1971年には、細部を見直したリヤリジッド型の最終モデルとしてZ50Z K1が登場した。

先代のZ50Zの基本を踏襲した改良版として、Z50Z K1(改良1型の意味)の機種名が当てられるが、アップマフラーやセンタースタンド、フロント分離機構などはZ50Zから踏襲。変更点は、ヘルメットホルダーが追加され、Z50Aから採用の自動油圧式のカムチェーンテンショナーが、Z50M時代のマニュアル式テンショナーに戻されていることなどだ。なお、同車からタンクエンブレムにMONKEYの車名が入るようになった。

なお、ここで紹介したZ50A/Z50Z/同K1時代のモンキーは、前後8インチのホイール採用で走りを向上しながら、クルマへの積載性にもこだわった過渡期のモデルとして1973年まで継続された。現在では、「ビンテージモンキー」とも称され、オールドファンやモンキーマニアの間で愛されている。

■1971年登場のZ50Z K1。先代Z50Zからの変更は、ヘルメットホルダー標準装備、自動油圧式カムチェーンテンショナーはZ50M時代のマニュアル式へと改めたことなど。Z50Zから踏襲の上下ツートーン色は、同時代のホンダモデルでは特徴的なデザインカラーで、このZ K1ではより鮮やかな配色が採用されている。

■エンジン諸元などはZ50A/Z50Zから不変で、横倒し積載時のキャブレターからの燃料排出コック、タンクキャップ上の漏れ防止レバーも踏襲。ミッションは自動遠心クラッチの3段変速は同じだが、シフトペダルは従来と異なる非シーソー式となった。

■後輪ブレーキは、ハンドルレバー操作だったZ50Zから、Z50Z K1では右フットペダル操作に戻った。Z50Mの方式と異なり、ブレーキペダルからロッドを介す通常の方式へと変更。Z50Aのダウンタイプからアップマフラーへの変更は、Z50Zからのもの。

モンキー Z50A/Z50Z/Z50Z K1主要諸元(1969/1970/1971)

■エンジン 空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク39×41.4mm 排気量49cc 圧縮比8.8 点火方式フライホイールマグネトー 始動方式キック

■性能 最高出力2.6ps/7000rpm 最大トルク0.3kgm/5000rpm 最高速度50km/h

■変速機 常時噛み合い式3段リターン 変速比 1速3.182 2速1.824 3速1.190 一次減速比3.722 二次減速比2.692

■寸法・重量 全長1255 全幅580 全高875 軸距875 最低地上高130(各mm) タイヤFR3.50-8(2PR) 車重55kg(ZK1は53kg)

■容量 燃料タンク2.5L

■価格 6万3000円(当時)

まとめ●モーサイ編集部・阪本  写真●山内潤也/ホンダ

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