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ホンダ ホーネット開発ヒストリー「250cc4気筒に900cc並の極太タイヤ!」異例の250ネイキッド、そのコンセプトとは?<1996年デビュー時レポート>

ホーネット 250 ホンダ 1996

ホーネット(250)はなぜ大型バイク並の極太タイヤを採用したのか?

CBR250RRをルーツとする250cc4気筒エンジンを搭載し、1996年2月に発売されたネイキッドモデル・ホーネット。2007年に生産終了となって以降も、高い人気を保ち続けている。
独特のサウンドを発することもあり、カムギヤトレーン採用のエンジンが話題にあがりがちだが、画期的な車体構成もホーネットの大きな特徴である。

一目でわかる点を挙げれば、250ccとは思えないリヤ周りのボリュームだ。それもそのはずで、当時のビッグバイクと同じ180/55ZR17のタイヤを採用している。
2020年代の現在でもビッグネイキッドや600ccスーパースポーツなどに使われているサイズである。

「クラスを越えた、インパクティブ・ネイキッドロードスポーツ」をコンセプトに開発されたホーネット。迫力ある車体構成はどのように決まっていったのか。『モーターサイクリスト1996年4月号』掲載、新車デビュー時の開発者インタビューを紹介したい。

インタビューを行ったのは、開発責任者の原 国隆さん、開発責任者代行の小沢源男さん、デザイン担当の水田耕司さん、フレーム設計の伊藤裕之さん、エンジン設計の高橋克徳さんの5名だ。

1996年2月に発売された250ccネイキッド「ホーネット」。発売当時の価格は49万9000円(税別)。

ホンダ ホーネット開発者インタビュー(1996年取材)

──この太いタイヤを装着したきっかけは?

ホンダ:新しい250を造るうえでのテーマに、クラスレスな魅力を持つバイクを造ろう、というのがあったんです。400のお下がりじゃない、安心してスポーツライディングを楽しめるバイクを、というのがあったんですね。そんなときに、このタイヤを付けたテスト車を走らせてみたらこれがいい。そこで、これでいくぞとなったんです。

──ではタイヤ優先の開発だっったんですか?

ホンダ:結果的にタイヤを中心した開発となりましたが、タイヤのための開発ではありませんでした。クラスを超えた楽しさ……大きさ、迫力、肌で感じられる楽しさが目標だったんです。カウルがなくて、どんな峠でもグイグイ曲がれるような……このタイヤは、そんなバイクを実現するひとつの要素だったんです。

──太いタイヤ=いいといえるんでしょうか?

ホンダ:大事なのは全体のバランスです。ラジアルならではの良さを引き出せたことで、ワインディングでの、手のひらの上で転がしているような安心感を出せたと思います。もちろん、重いというデメリットもないではありません。が、デメリットを消すのではなく、メリットを生かす方向で開発したのが結果的に成功に繋がったと考えています。

180/55ZR17のリヤタイヤはCBR900RRファイアブレードから転用。

フロントは軽快感をねらい16インチとされた(タイヤサイズは130/70ZR16)。

──デザインはだいぶ難しかったのでは?

ホンダ:確かに難しい部分もありました。タイヤが太いというのはデザイン上マイナス要素ではないので、楽しんでできました。大事にしたのは、まず、色んな角度から見て、それぞれ異なる美しさが感じられるようにしたこと。そのため、今回は上方からの視点を重要視しました。

──マフラーをアップにしたのはどういう意図だったのでしょうか?

ホンダ:完全にデザイン面からの要求です。ワイドなタイヤを強調するためにこういう形にしました。性能面でも良い結果が出せたと思います。

──タイヤの価格が高いのでは?という意見もありますが。

ホンダ:確かに250用のタイヤとしては高価です。しかし、本来900の重量とパワーに耐えられるタイヤなので、ホーネットに装着した場合はすごくもつんです。条件次第ですが、普通は2万km近くまでもつので、結果的には高価にはならないと思っています。

──ホーネットのライバル車は?

400も含めたネイキッド全車ですね。

ホンダ ホーネットの特徴を写真で解説

デザインで特に重視したという上からの眺め。左右に大きく張り出した燃料タンク。スリムなシート周り(足着き性向上の効果も考えられている)。一度左右にボリュームを出しつつも、後端に向かって絞り込まれていくテールカウル。
車名のホーネットはスズメバチ(=Hornet)のような抑揚のきいたボディライン、クラスレスな走りの力強さをイメージして名付けられた。

エンジンはレーサーレプリカ・CBR250RRがベースで、カムギヤトレーンを採用した249cc水冷並列4気筒DOHC4バルブ。「トルキーレスポンス」を狙い、従来型と言えるジェイドに比べ全域でトルクフルになっている(特に低中回転域が強化されている)。最高出力は40psだが、これは当時の250cc自主規制値上限。

ホーネットならではのデザインを生み出すアップタイプのマフラーは、「官能的な4気筒サウンド」を目指し排気音も入念に作り込まれた。ステンレス製カバーでタンデム時などの遮熱対策もしっかり行われている。

ワイドなリヤタイヤのグリップ力を生かすため、同車用に新開発されたモノバックボーンフレーム。75mm×45mm、厚さ1.6mmという極太の部材を使用し、シンプルな構造ながら高いねじれ剛性を実現した。生産性が高まるため、コスト削減にも繋がっているという。

シートを開けると独特なモノバックボーンフレームの一部が垣間見える。車載工具と書類が収まっているほか、かろうじて小物を収納するスペースはある。

メーターはネイキッドらしいオーソドックスな2眼式で、左がスピードメーター、右がタコメーター。レッドゾーンは1万6000rpmから。

フロントブレーキはフローティングディスクに対向4ポットキャリパーの組み合わせで、RC45と同じ焼結パットが採用されている。

アルミ製のスイングアームも83mm×32mmと太く、ワイドなリヤタイヤに対応する剛性を確保しつつ、乗り心地にも配慮した設計となっている。リヤブレーキはオーソドックスなシングルポットキャリパー。

ホンダ ホーネット主要諸元(1996年)

【エンジン・性能】
種類:水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:48.5mm×33.8mm 総排気量:249cc 最高出力:40ps/1万3000rpm 最大トルク:2.4kgm/1万1000rpm 変速機:6段リターン

【寸法・重量】
全長:2045 全幅:740 全高:1055 ホイールベース:1415 シート高:760(各mm) タイヤサイズ:F130/70ZR16 R180/55ZR17 車両重量:166kg 乾燥重量:149kg  燃料タンク容量:16L

【1996年発売当時価格】
49万9000円(税別)

インタビューに応じてくれたホーネット開発陣の皆さん

ホーネット開発スタッフの面々。開発が決定する前に、全員でホンダコレクションホールに行き、数々の名車に「無駄のない美しさ」を再発見。その経験がホーネットの開発に生かされたという。
開発責任者の原 国隆さん。当時、大人気となったVツインマグナの開発責任者でもある。
開発責任者代行の小沢源男さん。「街中でも峠でもグイグイ曲がる」楽しさを追求したという。
デザイン担当の水田耕司さん。「足まわりコンシャス」というコンセプトにこだわり、走りと性能の両立に貢献。
ホーネット 250 開発 スタッフ 1996
フレーム設計の伊藤裕之さん。元国際A級ライダー。ホーネットを「安心して気持ちよく曲がれるバイク」に仕上げた。
エンジン設計の高橋克徳さん。「余裕で楽しめる、手のひらで転がせるような特性」にこだわった。

レポート●モーターサイクリスト編集部 写真●小峰秀世 編集●上野茂岐

*当記事は『モーターサイクリスト1996年4月号』を編集、再構成したものです。

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