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匿名係長 第4回 ホンダ CRF250Lの巻

上司の前では吐けない本音を覆面インプレッション !

上司が白いと言えばカラスも白い。それがサラリーマンの悲しき世界だ。そしてここにも、本音のバイクインプレッションを上司に報告できず、うっぷんを募らせ続けている男がいる。

彼の名は匿名係長。課長の目の届かない場所で、耳を傾けてくれる部下だけにバイクの本音を吐く毎日だ。今日その矛先が向かったのは、2012年に5年ぶりの復活を果たしたホンダの250㏄トレール、CRF250Lだ。

 

(※当記事はモーターサイクリスト2013年5月号の記事を再編集して掲載しています。なお、人物設定や会話はフィクションですが、バイクの印象については某ジャーナリストの話を基に構成しており、編集部の創作ではありません)


HONDA CRF250L

07年のXR250生産終了から5年ぶりに復活したホンダの250ccフルサイズトレール。CBR250Rと基本を同じくする水冷単気筒をスチール製セミダブルクレードルフレームに搭載。インナーチューブ43㎜径の「セパレート・ファンクション(右側にバネ、左側にダンパーを配置)」式フロントフォークは250㎜のストロークを、プロリンク式のリヤサスペンションは240㎜のトラベル量を持つ。デザインはモトクロッサー・CRF250Rをモチーフとするが、ステップサイズを大型化し荷掛けフックを4カ所に装備するなど、公道での使い勝手を重視した造り込みを持つ。ちなみに車名末尾の「L」はストリート“リーガル”を意味するという。



某月某日・繁華街にて

 

係長●課長! お疲れ様でしたっ!

主任●したっ!

係長/主任●……。

係長●……。行ったか?

主任●行きましたね。

係長●あ~~~~~~疲れた! ったく、金曜だってのに課長のご高説とはな。

主任●好きですからね、部下に〝勝てる営業マンの心構え〟を説くのが。

係長●『その契約はお前の力で取ったのではない。営業二課全員のおかげだということを忘れるな……』って、思いっきりどこかで聞いたことあるセリフだし。このまま帰るのも癪だし、そこの飲み屋でも寄っていくか。おごってやるよ。

主任●ごっそーさんです!

主任●かんぱーい。ぷはー。いやでもホント、ウチの課長は言ってることとやってることが違いますよね。

係長●口ではザクとは違うとか言いたがるけど、いざとなればドムを踏み台にするぞ、あれは。

主任●金にも細かいしな~。こないだの接待費だって散々渋られて。粘って粘ってやっと出してくれましたよ。

係長●〝やっと出してくれた〟か。何かあのバイクを思い出すな。あれが出るまで、ホンダは250㏄のトレールがないって事態が5年も続いていたんだから。

主任●ヤマハのWR250Rはいいけど高いし、カワサキKLX250は基本設計が90年代まで遡るし……って、250のトレールが欲しい人には悩み深き時代でしたね。そこに遅れて登場して、しかも価格破壊までしてくれちゃったのがCRF250Lと。

係長●「これなら買える!」と思ってさ、みずほ銀行で44万9400円降ろして近所のドリーム店に直行したもんね。

主任●え? 係長ってCRFも乗ってるんでしたっけ?

係長●ふふふ。聞かせてやろうか? 俺の愛と涙のCRF物語を。

主任●いや、別にいいっす。

係長●聞けよ!

 

オフとオンとが同居?

 

主任●板さん、ホッピーのナカ追加! 氷抜きでね! はいはい、じゃあどうぞ。

係長●みずほの封筒と印鑑を持ち、色は伝統のエクストリームレッドと決め、ドリーム店に飛び込んださ。仕事の相棒には〝急な差し込みが……〟と仮病を使っておきます。あいててて、っと♪

主任●……。あっ、あの日か! 俺一人で何軒回ったと思ってんですか!

係長●いや、あの時はマジちょー痛かったんだって。電話切ったら治ったけど。で、カタログ見て「あれ?」って。車重143㎏? XRより10㎏も重い?

主任●仕方ないんじゃ? 水冷だし。

係長●空冷ってフィンが重くて、意外と水冷より重かったりするのよ? ともかく、試乗車に乗せてもらったのよ。実車を見れば久方ぶりのホンダフルサイズトレール。「ならでは」の高い車高とか足まわりのスラリ感にシビれるわけですわ。

主任●それまでのXR230と違って、外観も本格トレールですもんね。

係長●そう。跨がってもライポジやシートの感触がスパルタンで、高い車高ならではの跨がりにくさとか、本気モードなわけですよ。気分盛り上がりますわな。

主任●キタキター! ワッショーイ!

係長●さあ行け! 俺のCRF発進!!

……って進まないんだ。思ったように。

主任●は?

係長●基本的にオフロード車って、スロットル開けたときにピッと来る、ツキのよさが命なわけよ。そこを使ってピッチングを作ったり、フロントを浮かせたりして土の上でバイクをコントロールする。当然、「タタッ」と来る元気のよさをイメージしていたら……「ぶぇ~っ」って。ね、眠いっ! 1速でスタンディングしても右手のスナップだけじゃフロント浮かないんだよ?

主任●ほお。あ、砂肝と手羽先を塩で。

係長●しかも、高回転では二次曲線的にスポーティに吹け上がる。

主任●エンジンってCBR250Rと同じ、新開発の水冷単気筒でしょ?

係長●吸排気系を変更して、オイルライン&クラッチを専用設計し、ミッションもギヤ強度を高めてある。出力特性もCBRより低中速重視になってはいるけど、特性はオンロードそのものだな。そこに来て、加減速でピッチングがあまり起きないし、XRと比べると剛性感もかなり高い。サスやフレームとか個々がどーのってより、車体が全般的に堅いんだ。

主任●はい係長、たこわさ来ましたよ。

係長●おう。そして何より……重いんだ。泥遊びバイクにとって、それがいかに問題かは説明不要だよな。店のまわりをグルリした俺は黙り込みましたよ。ライポジの本気度に対し、このエンジンと車体。いったい誰に向けて造ったバイクなんだ、これは? って。

主任●色物バイクならミスマッチ感もアリでしょうけど、CRFは250㏄トレール路線のど真ん中ですもんね。

係長●見た目はスタイリッシュだし、ちょいハードル高そうな雰囲気も含めて、久しぶりのフルサイズトレールと思わせるよな。『そう見せておいて実はロードバイクなんです。てへぺろ』ってコンセプトならそれで構わないんだが、じゃあ、あの跨がりにくさは何なのよ、と。

主任●街乗りバイクには足着きが重要と。

係長●誤解なきように言っておくと、CRF250Lはとても乗りやすいバイクだし、高速道路も安定しているし、林道も無難にこなす。車高の高さを除けば街なかの使い勝手も悪くない。1台のバイクとしての完成度は低くない。俺が問題視しているのはさ、〝このバイクはXR250の血統ではない〟ってことなんだ。

 

 

XRの血統

 

XLX250R(83)

●RFVC(放射状4バルブ配置+半球形燃焼室)採用の空冷単気筒を初搭載。85年にXLR250Rに、95年にXR250へと進化しても使われ続け、07年に生産中止となるまでホンダ250㏄トレールを支え続けた名エンジンだ

 

XR230(05)

●805㎜という低シート高ながらCRFイメージの外観を持ち、オフロードの走破性も追求された、SL230とXRシリーズの魅力を併せ持つ機種。223㏄の空冷単気筒は18馬力を発生、車重は120㎏と軽量だ。


 

→係長、XR250ってそんなによかったんですか? 乗ったことないからわからないんですけど?

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