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「バイク?トライク?クルマ?」ジェット機デザインのアメリカ製マシン「PULSE SILVER BULLET」とは

パルス・シルバーバレットは前後輪の2輪+左右に補助輪という構造

「パルス」はアメリカではGCRV(グランド・クルージング・レクレーショナル・ビークル)=路上用娯楽用車両とか、バイク用エンジンで走る屋根付き車両のためオートサイクルなどと呼ばれる。
アメリカで必要な免許は自動車用で、運転席周りが鋼管製ロールバーで覆われ、シートベルトも付くためヘルメットをかぶる必要がない。
構造は、バイクのホイールベースを延ばし、その間に地上すれすれの2人乗り座席+バイクのエンジン+駆動系を配置した超ロングホイールベースの2輪車だ。

停止時に倒れないよう、左右に補助輪を配置。
走行中は片輪だけが接地し、もう片輪は浮いているため、走行は常に3輪……ということでトライク扱いになり、アメリカでのナンバーも2輪車用である。

外観を飛行機型ボディで覆った形態の乗り物は、ここに紹介するパルスのほかにスイスの「エコモビル」や欧米製の「モノトレーサー」などが存在していて、いずれも動画サイトで観ることができる。興味ある人はチェックしてみてほしい。

パルスの操作はクルマと同じで、スロットルとクラッチが足、シフトが手でハンドル操作。ちなみにエコモビルやトレーサーはバーハンドルで手動のグリップ、チェンジ操作だ。
パルスは三輪接地なので、コーナリング時もボディはバンクせず安定した走りが得られる。エコモビルはコーナリング時にバンクするため、格納式の補助輪が出てくれないと転倒必至……となるのとは対照的だ。

アメリカのクラブでは毎年ミーティングを開催していて50台ほどが集まる。ミーティングが行われる場所も飛行場と、まさに飛行機!?といった存在だ。

日本ではその姿から異次元の存在といえる乗り物で、2016年の東京・お台場で開催された「お台場旧車天国」に初見参したときは、「未確認飛行物体?」と話題になった。
オーナーが米軍の横田基地を訪問した際には近隣の国道で「見物渋滞」が発生したというほどで、とにかく目立つ存在。走っているだけで対向車がビックリするので、オーナーによれば事故防止のために普段はあまり走らないそうである。

一方、こんなパルスが多く存在し、道路を往来しているアメリカは、昔も今も乗り物にとって自由な国だと言えるだろう。

パルスのコクピットに入るには、まず足を先に入れる必要がある。アメリカでウインドーをスライド式のままにしているのは、太ったり大柄の人が乗降しやすくしたため。その運転感覚はすこぶる楽しいものだ。

パルスはアメリカではトライクとして認められたため、デビュー直後に日本にも輸入された。だが、今まで見たこともないような形態の車両だけになかなか認可されずにいた。その後、輸入車や輸入部品の法的緩和があり、サイドカーやトライクが多く輸入されるようになった。これにより海外の車両でも、書類などがそろっていれば日本でも登録できるようになってきた。

しかし、パルスの形態にどの業者も申請に戸惑い、オーナーは断わられ続けたという。そこで、サイドカーやトライクなど3輪バイクのスペシャリスト「新潟技研」が申請書類を何度も提出し、日本で唯一、アメリカ同様にトライクとして正規ナンバーを取得。
ちなみに日本にはあと2台パルスの輸入が確認されているが、いずれもナンバー取得をあきらめているという。

パルス・シルバーバレット主要諸元&各部解説

フォルム的には戦闘機「F-4ファントムII」のキャノピー部分を模したボディを持つ。オルジナルの尾翼は1枚だが、新潟技研により2枚に増やされている。キャノピー部は本来後方スライド式だが、オーナーの意向で前開きヒンジタイプへと改修されている。

PULSE SILVER BULLET主要諸元

[エンジン・性能]
種類:水冷4ストローク水平対向6気筒OHC2バルブ 総排気量:1520cc 燃料供給方式:ケーヒンVDGW 始動方式:セル 最高出力:71kw<97ps>/5000rpm 最大トルク:149Nm<15.2kgm>/4000rpm 変速機:5段リターン
[寸法・重量]
全長:5370 全幅:1980 全高:1700 ハンドル幅:240 シート高:555 ホイールベース:3124 地上高178(各mm) キャスター:25~27° タイヤサイズ:F140/80R13 R150/80R13 補助輪4.50-8 車両重量:780kg(F350kg/R430kg) 燃料タンク容量:24L オイル容量:4.3L

[参考価格]
850万円(車検・経費別・税別)
※アメリカ現地価格1万9000ドルの車両337号車(1989年9月生産の個体)を個人輸入。エンジンをGL1200からGL1500に換装。尾翼改良などのボディの加工を行ったほか、雨天時の視界確保のためのエアコンも追加装備。改造申請のすべては新潟技研にて行われた。

当初はLITESTER=ライトスターの名で13台が試作され40台を量産。その後、パルスの名では307台が造られた。
搭載エンジンは270台がヤマハXS250と400の並列2気筒、ホンダVF500が3台、ゴールドウイング(以下GL)1000、1100、1200が77台。GL1800やBMWなど各種エンジン換装車もあり、この車両は新潟技研が手を加えた車両だ。

フレームは127mm径極太パイプを前部に配置、その後部にエンジンをサブフレームに載せてボルトオンする方式で、どんなエンジンでも搭載可能。取材車はオーナーの好みでGL1500用を積んでいる。
GL1200まではラジエター1基+丸型ファンだが、GL1500からツインラジエターになるため左右側面に配置。エアインレット+アウトレットカバーを装着。バイクのGL1500よりも冷却効果を向上させている。
左右の補助輪は汎用の4.80-8サイズが標準。初期モデルの車幅は1950mmだが、最終型に近いこの車両は1980mmになっている。もう少し幅が広いほうが、コーナーを速く走れそうとのことだ。
ホンダGL用ワイパーを車両メーカーであるホンダより早く開発した新潟技研らしく、曲面部を拭くためにV配列のダブルワイパーをワンオフ製作。スクリーン内部の曇りはエアコンを効かして除去。
コクピットはまさに戦闘機といったデザイン。ハンドルもオーナーがビーチクラフト・キングエアーB350用をアメリカから取り寄せて装着。シフトレバーは右側のレバーを前後に動かす。パターンはGLと同じだ。
後部カバーを開けると、エンジン上部はエアコンの送風ファンとダクトで占められる。GLサイドカー系おなじみのクランク前側プーリーを配し、ベルト駆動で軽自動車用コンプレッサーを回す。
当初は流線型のカバー内にヘッドライトを配置し透明カバーをかける方式だったが、照度が低下するため後期型からはリトラクタブル式に。フロントサスはサイドカー同様にアールズフォーク式。
ボディ後端はジェットエンジンのタービン後部に似せたもので、テールレンズは日産スカイライン用。周辺にもLEDを配置し、走行中はジェット噴射のような青白い輝きを見せるという演出も!

レポート●小関和夫 写真●阿部哲也 編集●上野茂岐
※当記事は八重洲出版『モーターサイクリスト2017年6月号』より編集を行ったものです( 取材は2017年4月に実施)。

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