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匿名係長 第5回 ドゥカティ1199パニガーレの巻(前編)

 

ドゥカティ1199パニガーレ

カム駆動をチェーンとした超ショートストロークの完全新設計エンジン“スーパークアドロ”に、エアボックスを兼ねたアルミ鋳造モノコックフレームをボルトオンする現行ドゥカティの旗艦。クランクケースに後端にはスイングアームピボットも持ち、さらにリヤショックからの入力も後方シリンダーで受け止めるなど、エンジンを最大限にストレスメンバーとして使っている。電子制御の前後サスペンションやスロットル、ABSやトラクションコントロールといった電制デバイスも満載。スタンダードな「パニガーレ」、電子制御サスや鍛造ホイールを持つ「パニガーレS」、その特別塗色版「パニガーレSトリコローレ」、さらにチタンコンロッドや可変式スイングアームピボットなどを装備する最強版「パニガーレR」の4グレードを展開。日本仕様は最高出力が135馬力(本国仕様は195馬力)となり、車体右サイドに専用マフラーが装着される。

 

 

 

70年前に元ネタあり!?

 

係長●ライポジが先かこっちが先かはわからないが、パニガーレの車体構成って、インフォメーションの感じにくさに追い打ちをかけるような要素が多い。

主任●それって、例えばどこですか?

係長●1198より39㎜伸びたスイングアームもそうだし、リヤショックの配置もそう。ロンスイ化は増加したパワーに対する安定性向上が目的だろうけど、普通に乗るぶんには短いほうが、アクセル操作に対する反応が感じ取りやすい。リヤショック配置は正直言ってよくわからないなぁ。車体左側にオフセットした上に水平に寝かせて、って、定石よりもかなりぶっ飛んだレイアウトだから。

主任●でも、このへんのメカメカしさが超カッコいいじゃないですか。マフラーはカウルと一体化して存在感を抑え、リンクを介したリヤサスペンションは丸見え。他社のSSとは正反対の発想ですよ。

係長●意外とそのへんが採用の理由なのかもな。確かに見た目は新しい。で、その斬新さの極めつけがモノコックなわけだよ。どう考えたってトレリスやツインスパーと同じねじれ方はしない構造物だ。そりゃあライダーに伝わる印象も〝今までとは違うぞ〟ってなるだろう。

主任●でで、でもでもでも! 絶対的な能力が低いわけではないですよね?

係長●もちろん。バイクに合わせて乗り方をアジャストできる本物の乗り手が操れば、サーキットのタイムはしっかり出る。逆にパニガーレに乗って悩むのは、バイクからのインフォメーションを手がかりに、ワインディングを走るのが好きなライダーなんかかもな。ズバ抜けて上手くはないけど、SSの楽しさは十分に実感している。そうした中級以上の人は面食らうかもしれない。

主任●で、初心者はそのとっつきやすさに〝ドゥカティのスーパーバイクって乗りやすいじゃないの!〟と感激すると。

係長●俺にとってドゥカティの〝らしさ〟って、インフォメーションのみずみずしさだったのよ。情報が豊かだからもっと攻めたい、上を目指したいって気にさせる。〝ドカに乗ると熱くなる〟のは、乗り手をその気にさせる、インフォメーションの豊かさに起因するものと理解していたわけさ。

主任●モノコックフレームや独特なリヤショック配置を採用し、ライディングポジションの変更をしたことで、そういうものがちょっと薄らいでいると。

係長●現時点では。この先はわからないけどね。ドカがパニガーレでトレリスを捨てた理由はあとで考察するとして、あのモノコックフレーム、基本構成がヴィンセントのシリーズB/Cとびっくりするほど似てるんだよな。シリンダーヘッドから突き出した、スタッドボルトの配置とか形状とかね。となると、70年近く前に原型はあったと言えなくもない。

主任●え~! 独創のレイアウトは昭和20年代に元ネタが!?

係長●いや、エンジンをフレームとして使おうとすれば、大体似たような構成に落ち着く……ってことだろう。ともにVツインだしね。Vツインがフレームを兼ねるモノコックつながりなら、ブリッテンという例もある。夭折した天才設計者が趣味の延長線上で情熱を傾けた、あのニュージーランド製スーパーツインは、俺にとっては今も“神車”の1台だな。

 

 

意外なほどの共通項

 

VINCENT seriesB RAPIDE(1946)

●1936~55年に販売されたヴィンセントVツインには、大別すると4種のシリーズが存在し、46~54年に販売されたシリーズB/Cは、パニガーレの原点と思える車体構成を採用していた。このモデルでフレームに相当する部品は、エンジン上部にボルト留めされたオイルタンク(カットされた燃料タンク内に見える部品)で、スイングアームピボットがフレームではなくパワーユニット後部に位置する点や、カンチレバー式リヤショックの取り付け角度も、パニガーレに通ずる要素といえる。

●ヴィンセント・シリーズBのエンジン分解図。シリンダーヘッドを突き抜けたスタッドボルトに四角いプレートが固定されているが、このプレートとオイルタンクがボルト留めされる、という構造

 

伝説の個人製作レーサー、BRITTEN V1000

 

ニュージーランド人の故ジョン・ブリッテンがすべてを製作したV1000は、’90年代に世界中のツインレースで圧倒的な活躍を見せ、デイトナではドゥカティスーパーバイクと同等の速さを発揮した。フレームは87年の初代モデルから一貫してカーボンモノコックで、スイングアームピボット位置はヴィンセントやパニガーレと同様のパワーユニット後端。リンクを介して作動するリヤショックはエンジン前部に装着されている。

 

 

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