実のところ、メカニズム的には高性能をアピールする要素はこれといってない、オーソドックな構成のCB750。
しかし、それらが絶妙なバランスで「扱いやすい」という特徴を生み出していたのだと思うし、大型バイクとしてはリーズナブルな価格にも貢献していたのだと今となって思う。
report●上野茂岐 photo●沖 勇吾
「令和」の時代でも通用するんじゃないかと思う”ベストバランス”
前編で紹介したように、僕の印象とベテランライダーの声をまとめると、CB750の「乗りやすい」という特徴はこんなことなんじゃないだろうか。
「腕に覚えのあるライダーにはどこまでいけるか?というセンサーが明確で想いのまま操れて、ビギナーにとってはミスに対する修正操作もしっかり反映してくれる優しさもある」。
そこで驚くのは、CB750が至って普通の構造で作られていることだ。フロントは正立フォークで、リヤはツインショック。ブレーキはラジアルマウントでもないし、ABSもない。「レーシングマシン譲りの何々」もないし、電子制御機構もない。エンジンは空冷かつキャブレターで75馬力、数字だけ見れば大したことはない。
それゆえか70万円台半ばと新車価格がリーズナブルだったのだろうか。時代が10年以上違うし、ABSやETC、グリップヒーターなどが標準装備されているなど装備面での違いもあるので単純比較はできないが、ちなみにホンダNC750Xマニュアルミッション仕様は80万円後半だ。
とまあ、所有感を高めるような高性能さをアピールするようなところもなく、凝ったデザインというわけでもないのだけど、半面、気兼ねなく何にでも使える美点だったように思う。
実際、”公道教習車”ではなく”愛車”へと変わったCB750を、日帰りにロングにとツーリングに使うのみならず、街乗りの足としても使っていたし、どんな場面でも不満を感じることはなかった。
平成から新しい時代に変わるこの今においても、こんな万能性を持っていて、しかもビギナーからベテランまでが楽しめるというバイクはなかなか無いんじゃないかと思うのである。
なお、2008年に生産終了となり、2019年現在、中古車価格は結構高値安定である。走行距離が少なく、状態のいいものだと新車価格に近いものなんてのもある。
もう一度手に入れると考えるとちょっと困るが、良さが再評価されたと考えるとちょっと嬉しい(高い中古車価格の理由には今後二度と手に入らないであろう「キャブレター+空冷4気筒」というものへのヴィンテージ感みたいなものもあると思うけど)。