ヒストリー

【傑作昭和レーシングマシン列伝】其の6:近代GPを支えたヤマハパラレルツイン(後編)

●ヤマハ第1期ワークス活動最後のレース、’68年イタリアGP250㏄で、リード&アイビーのRD05Aの遥か後方で争うTD-1Cの(7)J.フィンドレーと(28)G.キース。前者は2周遅れの5位、後者は1周遅れの4位に入賞する。
 

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市販レーサーによるタイトル獲得

ギヤボックスは6段まで、そして50㏄は単気筒、125と250㏄は2気筒、350、500㏄は4気筒までという気筒数制限を盛り込んだFIMの新レギュレーションは、’60年代末より順次施行されることとなった。
この改訂による恩恵を、最も受ける立場にあったのはヤマハであろう。

’68年限りで解散したGP開発部門は、規模を縮小しながら市販レーサーを開発していたグループとまとめられ、ロードレーサー、モトクロッサーなどの開発を手がけるようになっていた。
既にTD系を持っていたヤマハは、“GP新時代”を迎えるにあたり、有利な立場にいたのである。

’69年、新しい公道車であるDS-6の登場により、車体・エンジンともにTD-1Cから一新されたTD-2が登場。

●’69年のマン島TT250㏄クラスを走るP.リードとヤマハTD-2。’68年限りのヤマハワークス撤退後、リードはヤマハ製市販レーサーを駆る多くのプライベーターたちのひとりとなった。この年はベネリ4サイクル4気筒とオッサ2サイクル単気筒、そしてMZ2気筒といったワークス系のほかは、ヤマハTDユーザー(そしてTDエンジンを搭載するスペシャル)でグリッドを埋め尽くすという光景が数多く見ることができたシーズンだった。

さらに新ラインアップとして、初の350㏄市販レーサーのTR-2も誕生している。
かつてのワークスRD56に似たフェザーベッド型フレームを持つTD-2は、5月11日に開催された西ドイツGPで、ヤマハ市販レーサー初の世界GP勝利を、K.アンダーソンが達成した。
’69年度の世界GP250㏄クラスは、新規格施行1年前の間隙を縫って、4サイクル4気筒車で参戦したベネリのものとなり、アンダーソンとヤマハは、ともに僅差でライダー/コンストラクター2位の座に甘んじた。

翌’70年、ヤマハはアンダーソンと、R.ゴールドに“セミワークス”のTD-2/TR-2を与えることを発表。
一方、前年の王者K.キャラザースはプライベーターの立場でTD-2ユーザーとなり、ヤマハ・セミワークスのふたりとタイトルを争った。
セミワークス車には6速ミッションが与えられており、スタンダード車よりもトップエンドでのパワーを有効に使えるというアドバンテージを持っていた結果、これを駆るゴールドが世界タイトルを獲得。

●’69年マン島T.T.250㏄クラスを走るR.ゴールドとTD-2。’68年にゴールドはブルタコTSS250の車体にTD-1Cエンジンを搭載したスペシャルに乗り、年間ランキング4位を獲得。’70年はセミワークスTD-2で王者となった。

キャラザースが2位、もう1台のセミワークス車に乗るアンダーソンが3位に入った。
以下4位J.サーリネン、5位B.ジャンセン、6位C.モーティマー、7位G.マルソフスキ……と、キャラザースを筆頭にプライベートTD-2がランキング上位を独占。
新時代の世界GP250㏄クラス盟主の座に、悠々とヤマハは着くことができたのである。

翌’71年は、P.リードが250㏄タイトルを獲得することになるが、リードが駆ったのはセミファクトリー車ではなかった。
リードはプライベーターの立場で、この年マイナーチェンジを受けたTD-2Bをモディファイし、セミワークス車に乗る王者、ゴールドとタイトル争いを繰り広げたのである。
タイトルの行方は最終戦スペインGPまでもつれたが、ゴールドがメカニカルトラブルで脱落し、2位に入賞したリードにタイトルがもたらされた。
この瞬間こそ、TD系誕生10年目にして、ついに市販レーサーによる250㏄ワールドタイトル獲得が実現した瞬間であった。

●P.リードはチェニー製フレーム、H.ファスがチューニングしたエンジンを搭載するスペシャルに乗り、’71年にはセミワークスTD2Bを破り、プライベーターながら250㏄クラスのチャンピオンとなった。

翌’72年は、’71年に発売された公道車、DS7=DX250とR5=RX350を母体とするTD-3/TR-3がデビューする。
両車は主要部品を共用化させることを念頭に開発され、TD-3はついにYDS-1以来の垂直分割ケース、カムプレート式変速機に別れを告げることとなった。
この改良は製作コストの削減を主に施されたが、将来の6速化を考慮しても必須の処置でもあった。

●TD-3は伝統のBS値=56×50㎜を廃し、54㎜スクエアを採用。350㏄のTR3(64×54㎜)との、部品共用化が図られていた。この仕様変更は、250/350㏄両クラスに参加するライダーに歓迎された。

’73年の水冷TZシリーズ誕生以降も、ヤマハ製市販2気筒レーサーは、ワークスへのステップアップへの手段としてプライベーターに愛され続けた。

●’73年の初代TZ250Aは、TD-3の車体にワークスバイクからフィードバックされた水冷エンジンを与えたような仕様だった。最高出力は44psとTD-3と同等だが、冷却性能の向上により安定した性能を発揮することが出来た。

また、’82年のJ.L.トアナドルにより、プライベーターのTZ250がワークス系チームを打ち破って250㏄のタイトルを獲得するという快挙が、’71年のリードとTD-2B改に続き成し遂げられたことが示すように、一線級のワークス・イーターとしての地位を保ち続けたのである。

●’76年型のTZ250Cは、前後ディスクブレーキとモノクロスサスを採用している。その後年々TZ250/350はアップデートされていくが、’90年型でVツインエンジンとなり、パラレルツインの血統が途絶えることとなった。

 

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