ヒストリー

【傑作昭和レーシングマシン列伝】其の4:最高峰を制したスズキ・2ストロークスクエアフォア(後編)

●’70年代末のGPシーンを象徴するカット。①K.ロバーツのYZR500と③W.ハートフ、⑪V.フェラーリ、⑦B.シーンのワークスRGの後方には、数多くのプライベーターたちと市販RGらが群れをなしている。市販RGは’76年のデビュー以降、何度か500㏄クラスの首位の座を奪取することに成功している。市販レーサーがグリッドを埋める図は、最高峰クラスでプライベーターという言葉が死語となった今では、あり得ない光景ともいえるだろう。
 

前編はこちら


 

最強の500㏄市販レーサー

’76年にスズキは市販型RG500を発売し、公式にはワークスチームによる活動を停止したことにしている。

●’76年型の市販RG500。70台が欧州を中心に販売され、数多くのプライベーターたちに好評とともに迎え入れられた。’79年の4型からボア・ストロークが56×50㎜から、’76年ワークスで採用された54㎜スクエアへと変更されている。’82年からは新型エンジン、フルフローターリヤサスペンションなどを採用したRGBを販売。’84年にアルミフレーム、16インチフロントタイヤを導入するRGB(3型)を最後に、市販モデルの販売は終了している。

英国のヘロンスズキがGPチームの運営を担い、シーンら限られたライダーのみにカスタマー版よりもスペシャルな仕様を持つワークスRG500をスズキ本社が供給する体制でシーズンに臨んだ。
この年、エースのシーンは5勝をあげ、3年目にして初の最高峰タイトルをスズキにもたらした。

●’79年第3戦西ドイツGPを走るB.シーン。’70年代スズキのエースとして活躍したシーンのGP初優勝は’71年のベルギーGP125㏄クラス。そのときのバイクは、S.グラハムから購入した’67年型スズキワークス2気筒であった。以来彼が’84年に引退するまでに記録した23の勝利のうち、スズキRG500とともに勝ち取った勝ち星は18勝。希代のスター性と速さという実力を兼ね備え、多くのファンに愛されたライダーであった。

さらに年間ランキング12位中のうち、11名はRG500のワークス/カスタマー仕様を駆っており、スズキはその後’82年まで続くことになるメーカータイトル7連覇の、最初のひとつを圧倒的大差で手中に収めることとなった。

翌’77年もシーンはタイトルを連覇することとなるのだが、ワークスRGの活躍と同じようにGP史に特筆されるべきは、カスタマー仕様RG500の活躍ぶりであろう。
当時の量産3気筒スポーツ、GT750のおよそ6.25倍という価格(約5000英ポンド)で販売されたRG500は、多くのプライベーターに歓迎されることとなった。
’76年開幕戦のフランスGPでは、なんと23台ものRG500がスタートラインに並んでいる。
同年の市販RGの顧客リストのなかには、かつてMVで最高峰タイトルを獲得したP.リードとG.アゴスチーニの名も刻まれていた。

●’76年型RG500とシーンの走り。騒音規制導入レギュレーションに従って、チャンバーのテール部にはサイレンサーが備わっている。シーン用は、ワイドタイヤが装着できるよう特別仕様のリヤまわりが与えられていた。

G.アゴスチーニは、’76年より個人参加でMVに乗ることを公表しイタリアのファンを湧かせたが、’76年の第3戦イタリアGPでは、1〜2戦で駆ったMVに跨がらず市販RGで出場した。
’66年から’72年までMVで、そして’75年にヤマハ4気筒でタイトルを獲得した彼は、すでに2サイクルではなければ500㏄クラスで勝てないことを、誰よりも良く知るライダーだった。

その他’76年に市販RG500を購入したライダーの中には、’81年のタイトルをワークスRGΓ(ガンマ)で得ることとなるM.ルッキネリもいた。
前年の’75年、ルッキネリは350㏄クラス32位という無名のライダーだったが、フランスで3位、そしてオーストリアと西ドイツGPで2位と3度表彰台に上る活躍を見せて、スターダムの階段を上り始めることとなったのである。

●’76年に市販RGで活躍したライダーの最右翼が、米国人のP.ヘネンだろう。ダッチT.T.では2位表彰台獲得。そしてフィンランドGPでは優勝。年間ランキング3位という輝かしい成績を残した。

その後’80年代初頭まで市販RGは、プライベーターに最高峰クラスで戦う希望と夢を与え続ける存在となった。
マンクスノートンなどの英国製単気筒車で活躍することが、日本製ワークスチームに招かれる近道だった’60年代のように、当時市販RGで目覚ましい活躍を見せることは、ワークスバイクに乗るという目標を実現させる近道だったのである。

●’78年の開幕戦となったベネズエラGPで優勝した、バリーシーンとワークスRG500。この年シーンは2勝に留まり、ヤマハのK.ロバーツに2年続けて守り通したライダータイトルを奪われる結果となった。

この時代を超えた共通点から、市販RGを’70年代のマンクスノートンと評する声は少なくないが、それぞれの時代で勝ちうることができたワークスバイクとの実力差を考慮すれば、市販RGこそが歴史上最も優れた500㏄市販レーサーだったことに異論を挟む者はいないだろう。

 

★『浅間から世界GPへの道』 現在発売中!!★

浅間レースから現代に続く日本レース史を扱っている『浅間から世界GPへの道-昭和二輪レース史1950〜1980』、現在好評発売中です!
1950年代当時、国内には舗装路のレースなど無く、ダートでのレースしか知らなかった日本のバイクメーカー。舗装路を走るノウハウなど全く無かった日本メーカーがどのようにして国外のレースに挑んだのか、男たちは何を胸に抱きバイクを走らせたのかが分かる貴重な一冊となっております。現代では世界トップクラスの実力を誇る日本のバイクメーカー、FIM世界耐久選手権など多くのレースが行われる鈴鹿サーキットがもたらした新しいモーターサイクルの歴史、戦後国産メーカー工場レーサー系譜図鑑など、これさえあれば日本の二輪レース史が丸分かりできるボリュームとなっております。
また、サーキットとしての公式レースの幕が下りることとなった、幻の’59浅間火山レースのカラー映像、それから’59第1回全日本モトクロス信太山大会も収録されています!
ぜひお手にとって、先人たちの熱い思いを感じてください!

アマゾンの購入サイトはこちら!!

 

 

あわせて読みたいオススメ記事はこちら!

アバター

モーサイ編集部

投稿者の記事一覧

1951年創刊のモーターサイクル専門誌。新車情報はもちろん、全国のツーリングライダーへ向けた旬な情報をお届けしています!

モーターサイクリストは毎月1日発売!

関連記事

  1. 【平成バイク大図鑑2】ゼファーに端を発するネイキッドモデルの台頭…
  2. 【時代を駆け抜けたバイクたち3】KAWASAKI 900 SUP…
  3. 追悼:日本モータースポーツ文化の礎を築き逝った昭和のレジェンドラ…
  4. 激闘! ヤマハワークスマシン「0W」のすごい歴史①
  5. 昭和~平成と駆け抜けたCBとライバルたち(1)750登場前夜
  6. 「セローらしさ」って何だ? 2代目に引き継がれた理念
  7. 【二輪車関連老舗ブランドの肖像】No.1:二輪用品市場を牽引して…
  8. 【平成バイク大図鑑6】アメリカンブーム、それは速さへのアンチテー…

旅に出よう!

おすすめ記事

夏の快適ツーリングは足元から! Formaの新作ブーツが登場!! 【NEW ITEMS】ナイトロンジャパンからHONDA CRF1000L AfricaTwin (’16-) 用フロントフォークカートリッジ登場! 激闘! ヤマハワークスマシン「0W」のすごい歴史① 【時代を駆け抜けたバイクたち10】小排気量・スクーター編 SPIDI、2018年春夏モデル・怒濤の入荷ラッシュ!!【レインウェア編】 【変幻自在の派生カブ:2】カブにオフロード性能をプラス! ハンターカブシリーズってどんなカブ? 【NEW MODEL】MV AGUSTA BRUTALE800 【二輪車関連老舗ブランドの肖像】No.1:二輪用品市場を牽引してきた「南海部品」ヒストリー ファンでなくても知っておきたい!? スーパーカブ雑学大辞典:前編 【ワインディングニッポン】ビーナスライン(長野県)
BIKE王

ピックアップ記事

カテゴリー記事一覧

PAGE TOP